思惑 ページ3
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「私はさ、あんたがどんどんオトナになってくのが正直悔しかったよ」
「オトナ？ どこが？？」
「精神面は私より圧倒的にオトナだよ」
「‥‥それ言っちゃう？
「ん〜確かに」
ボーダーの正隊員は場数を踏んだ者ほど精神年齢が上がる。稀に例外もいるが、大抵はそうだ。
それも仕方がないことだ、と思う。生身の安全を保障するシステムが100％稼働するとは限らない。いや、今までそんなことはなかったが、万が一というのはあるだろう。敵の策略によって無効化されないとも限らないし、捕まる可能性だって。
口が裂けてもボーダー側はそんなこと言えないが、正隊員の彼らはどこかで命を懸けて戦っている節がある。
「‥‥公平、敵に捕まったらあっさり降伏しそうで怖い」
「そりゃ〜下手に抵抗して殺されるよりはな。まあ情報のために拷問されるくらいなら自害するかもだけど」
「そういうとこ。良くも悪くもあんたは簡単に自分で自分を切り捨てられるから」
12月に、また行くんでしょ。
ぼそりとこぼせば、公平は「心配すんな。おまえ置いて死んだりしねーよ」とわしゃわしゃ髪を掻き乱した。
推測とはいえ私が気づいていることに、公平は今まで何も言ってこなかった。それはお前の勘違いだとか、そういった否定はおろか、ボーダーへの報告もしていないようだ。それは彼なりの優しさなのかもしれない。
私たちは双子だ。誰よりも強い血の繋がりがある。だからこそ、お互い何をされたら嫌なのか、苦しむのかを熟知している。
情報漏洩を防ぎたい者たちには、情だの信頼だのは嫌われる。当たり前だ。そんなのが通用していたらリスクマネジメントなど必要ない。
けれどそこを押し通すのは、彼なりに私への罪悪感があるのだろう。
かくいう私も、もし自分がのうのうと暮らしている裏で公平が死にかけていたらと思うと、罪悪感どころではない。
もしおれが死んでも、おれの後追って死ぬんじゃねーぞ、と冗談めいた口調で言われたが、多分それは彼からの牽制だろう。
だから私もこう返したのだ。
私に死なれたくないんならあんたも勝手に死なないでよね、と。
お互い呪いのような言葉をかけ合い縛って、そうしてこの世に引き留めるかのようにして生きていた。
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作者名：夏向 | 作成日時：2020年9月17日 21時
