認 知 済 -まふまふ-

〃 ページ7

「ん〜仕事関係？
ほら、アタシ今BARで働いてるけどそこが東京に店舗出すんよね〜。
店長って役もらって、東京進出しちゃうやつ〜」



握手した手を離せないまま、彼女は淡々と話していく。


大阪のライブやイベントにはもう来ない？
東京でも絶対に来てくれるかな？
店長になったら忙しいよね。
来れないかな。

それは寂しいな……


欲望のままに言葉が出かけて口を噤んだ。

こんなの良くない。
彼女はリスナーで、無理のない範囲に来てもらうことが良いことで。

今彼女が絶対に来てくれるのは本当はおかしなことで。

握手会だって絶対に当たるとは限らない。
ライブだってそう。

それなのに彼女は必ずボクを見に来てくれていた。
逢いに来てくれていた。

それが無くなるかもしれないなんて考えたくもなかった。



「何考えてんのか知らんけど、東京行ってもライブも握手会も絶対行くで。
まぁ当たったらの話やけど。
大阪も出来る限り参加するつもりやし、だからそんな思い詰めた顔すんなって〜、カッコイイのが台無しやぞ」



俯いてたボクの顔を覗き込んでくるヤナセ。

フッと偉そうに笑った彼女に思わず



ま「……ヤナセが俺のことカッコイイって言うとか、もう明日世界破滅するじゃん……」



なんて可愛くもカッコよくもないことを言った。



「俺って言うてもうてるし、世界破滅なんぞしやんわ、アタシをなんや思ってんねん」

そ「お前らの会話確実にリスナーと歌い手のではないよなw」



そらるさんのそんな一言なんて耳に入らない。

初めて言われたカッコイイの言葉に頭がクラクラして、心臓がキュっとなって。

あぁやっぱりダメだなボクは。
Aはリスナーなのに、こんなにも好きが溢れてる。

ずっと支えてきてくれたAがずっとずっとずーっと好き。


こんなこと言えやしないけど。



「そらるさん、ヤナセはそらるさんが好きやで」

ま「……う、浮気は許しませんッ！！！」

「浮気やない、不倫不倫。
だってアタシまふまふの母で通ってるから」

ま「尚更ダメじゃんか！！」

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