2 ページ4
なんだかその視線が痛くて咄嗟に聞くと、質問を質問で返された。
普段なら、質問を質問で返さないの、と言うところだけど、核心をついてきたその言葉にドキッとする。
私はキヨと同じで、いつも大体笑っているからなんとなく違和感を覚えたのかな。
多分それくらいのことでしょ。
｢んー、まあ、ね。んー、でも大丈夫｣
別に寝てしまえばきっと忘れるよ。
明日会社に行くのがちょっと憂鬱なだけで、気にしなければ大丈夫大丈夫。
最近嫌なこと続きで、たまりにたまっているから今日はやっぱり早く寝よう。
自分自身に頭の中で声をかけながら曖昧な返事をし、とにかく眠る準備をしようとイスから立ち上がる。
そしてソファの横を通ってお風呂場に行こうとしたとき、ぐいっと腕を掴まれて後ろによろけてしまった。
｢わっ｣
危ない、と思って咄嗟に足を引くと、かかとがソファの側面にぶつかり、そのまま肘掛けに膝かっくんをされてソファに倒れ込んだ。
このソファがふわふわだったからよかったけど、硬めのソファだったら絶対痛かった。現にかかとがちょっと痛い。
こんなことをやらかす犯人はもちろん一人しかいない。
｢キヨ！危ない、って、｣
私を引っ張った張本人を叱ろうと後ろを振り向くと、想像以上に顔が近くて思わず息を呑む。
呆気にとられた隙に、キヨが肘掛けに乗っかったままの私の脚をぐいっと動かし、私を普通の体勢でソファに座らせた。
そして目の前に立ち、私の両肩に手を添えて顔を覗き込むように腰を曲げる。
｢大丈夫じゃねえだろ｣
私の目を真剣な面持ちで見つめてくる彼は、騒がしくて馬鹿っぽい人気者のゲーム実況者のキヨじゃなくて、私を心配してくれる優しい彼氏のキヨだった。
それだけでもなんだか胸が締め付けられて、目元が熱くなってくるのに、追い打ちをかけるように放たれた言葉で私の中の何かが解けた。
｢最近無理して笑ってんじゃん｣
ああ、キヨにはバレてたんだ。
そう気づいてしまうと、溜まっていた感情が溢れ出すように自然と涙がポロポロと零れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽっぽ(プロフ) - りなさん» コメントありがとうございます。わわわ、とても嬉しいお言葉...!!私は嬉しくてハゲそうです...! (2018年2月21日 22時) (
レス) id: 5326fc1be3 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - どうしよう！文章の書き方が私好みすぎてハゲそうです！ (2018年2月21日 22時) (レス) id: 033c473335 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳩ポッポ | 作成日時：2018年2月20日 16時
