◇０３「提案」 ページ4
「…つまりこの世界の人は魔法は使えないけど“個性”は使える…？」
「なんでガキでもわかる事を１から１０まで説明しねぇといけねぇんだ」
ついさっきこの世界に来たばかりなのだから仕方ないじゃないか、と思わず言いそうになったがグッと堪える。
「つまり貴方は無個性であり、戸籍もないという事になりますね」
「えっと…黒霧さん、でしたっけ。それって世間的によろしくない…ですよね？」
「よろしくないですね」
無慈悲な即答をされてしまったが当たり前だ。
この世界では無個性の人間は馬鹿にされやすい傾向にあるらしい。
「……その、これからどうすればいいでしょうか」
「知るかよ」
「死柄木弔、そう邪険に扱うのはやめましょう。私にいい考えがあります」
「あ？」
「この子を敵連合に入れるのです。我々の目的の為にも大切な一歩となるでしょう」
「は？」
「え？」
私は驚きのあまり、握っていたマジカルペンを床に落としてしまった。
「なんでこんなガキを入れなきゃなんねぇんだ」
「子供だからといって侮るのはいけません。
よく考えてみてください。“個性”を持っていないにも関わらず“個性”持ちと同等…それ以上の力を秘めている存在です。
それに“個性”じゃないという事はヒーロー達…いや、人類にとって未知の領域……。そのような存在を手放す理由がありますか？」
よく分からないが、なんとなく黒霧さんの言いたい事は伝わってきた。
魔法という概念がない世界で魔法が使える人間なんて未知の存在だし怖がられるに決まってる。
きっとそれを利用したいのだろう。
「……」
「我々の仲間になれば最低限の生活は保証できます。それに、戸籍がない人間は“こちら側”にいても不利益がない。…貴方にとっても悪くない条件でしょう？」
「…別に寝る場所さえあればいいんですけど。その、ここに入って何したらいいんですか？元いた世界では普通の高校生だったんで大した事は出来ませんよ」
「そうですね…では、“高校生”という点を活かすのはどうでしょうか」
「…と、言いますと？」
「…雄英です。あそこに入学して、内部の情報を探ってきてもらいます」
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作者名：匿名 | 作成日時：2020年7月9日 4時
