◇０２「詰みと罰」 ページ3
私の名前はベル・エヴァレット。
一人前の魔法士になる為に名門・ナイトレイブンカレッジで毎日勉強に励んでいたら、いつの間にか変な世界に飛ばされていました。
幸いにもマジカルペンや他の私物はあったので魔法で辺りを照らしながら行く宛もなく周辺を探索していたら変な人達に捕まって今は尋問を受けています。
直球で言うと“詰み”だ。
「おいガキ。口がきけねぇのか？」
「……」
「…黒霧、こいつ殺…」
「は、話せます！」
あまりにも物騒だから思わず萎縮してしまう。
この人、オクタヴィネルの例の３人組以上に怖い。
もうこの際あの３人でいいから早く助けてほしい。あの３人が恋しくなる日が来るなんて思ってもみなかった。
「お前、“個性”なんだ」
「“個性”？何ですかそれ…」
「は？ふざけてんのか。お前がそのペンで変な力を使ってたのは黒霧が見てんだよ」
「…魔法の事ですか？」
「おい黒霧、やっぱこいつ殺…」
「す、すみません！あの、本当にわからないんです！」
***
「つまり、貴方は異世界から飛ばされてきた魔法使い…と」
厳密にはまだ一人前の魔法士ではない。
しかし、ここで詳しく説明をしてややこしい状況にしたくない私は目の前の人物の発言を一旦肯定する。
「そ、そうです…」
「そんな話が信用出来るか。…これだからガキは嫌いなんだ。黒霧が殺らないなら俺が殺る」
目の前の白髪の青年はそう言うとゆらりと立ち上がり、不気味な表情を浮かべてこちらに手を伸ばした。
…このままだと殺されてしまう。私の本能がそう告げている。
魔法が使えない人間相手に魔法を使うのは気が引けるが…身を守る為だ。仕方ない。
「…っ何でもいいから、出でよ！」
赤い魔法石がはめ込まれたマジカルペンを青年の方に向けて振ると、目映い光と共に上から謎の大釜が１つ降ってきた。
「……」
…確かに「何でもいい」とは言ったが、大釜って…。魔法を使うたびに何故か毎回大釜を出す友人を思い出してしまう。
しかも相手には一切効いてない。魔力を惜しまず召喚魔法をすべきだったかもしれない。
「…あ？なんだコレ」
しかし、青年は私の方に伸ばしていた手を引っ込め、突然降ってきた大釜を怪訝な目で観察し始めた。
何もない場所から急に大釜が降ってきた事によって、彼達は嫌でも魔法というモノを認めざるを得ない状態になった…という事でいいのだろうか？
…それなら結果オーライという事にしておこう。
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作者名：匿名 | 作成日時：2020年7月9日 4時
