紅 ページ22
「荼毘く…」
ぽたりと床に落ちたのは、荼毘くんの血だった。
目の下のツギハギから流れ落ちる涙のように、一筋だけ、こぼれていた。
「なんでもねェ」
ぐいっと血を拭って、出て行こうとする。
そういえば、いつもどこで休んでいるんだろう。
「待って！！」
「ぐっ？！ってェなひっぱんな！」
「ごめん！！！」
荼毘くんの肩をもって止めようとして、勢い余って上着ごと中の服もを掴んでしまったようだ。
「今日！ここ！泊っていって！手は出さないから！縛ってくれてもいいから！！」
「縛らねェよどんなプレイだ！」
「泊るのは良いんですね？！言質取ったよ！」
「言ってねェよ取れてねェよこの変態イカレ女」
ハァ、とため息をつきながらソファの方へ歩き出した荼毘くんは優しいと思う。
「てめェと会話すると疲れる」
「それでも会話してくれる荼毘くんは優しいよね」
「そォだよ俺は優しいんだ、感謝してさっさと寝ろよ」
「優しい優しい荼毘くんや、君はベッドで寝たまえよ」
変なところで紳士感あると私の理性がきっついんだよね、お分かり？
「ベッドで寝たら襲われるだろうが」
「………襲いませんが！？」
返事に間が出来たのはちょっとそういう事を考えてしまったからだ。別に襲おうと思っていたわけではない。断じて。
折衷案として、私は引っ越し早々に物置きの奥に突っ込んだ来客用の布団をひっぱりだして布団で寝ることになった。
私より高い位置にいないと襲うかもしれないと脅して(？)荼毘くんにはベッドで寝てもらうことにした。
使わないだろうとしまった布団なのに、それを使うまでの期間、わずか２〜３日である。
なぜ私が彼を引き留めたのか、一夜を過ごしたい♡なんていう下心は多少持ち合わせてはいるものの、大部分は彼の血を見た時、彼が泣いているように見えたことだった。
私が、何か彼の心の中の繊細な部分に触れてしまったんだろう。
私が、彼を泣かせた。私が……。
布団にもぐって、二時間ほど経ったころ。
すぅ…と寝息が聞こえているから、彼はきっと、もう寝てる。
そろりと足音を立てないように彼の眠るベッドの傍へ行き、優しく、壊れないように頭を撫でた。
「…ごめんね、泣かせて。私があなたにもっと近づけて、貴方が貴方自身のことを全部私に話してもいいと思ったら、聞かせてね、待ってる。黒い髪も、ピアスも似合ってる。好きだよ」
起きる気配のない荼毘くんに安心して、私は布団へ戻った。
その日は、少し幸せな夢を見た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヒロアカ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
m(プロフ) - コメント失礼します。どちらのエンドも作ってくださるとは本当に有難いです。これから、更新再開にワクワクした気持ちで待つのが楽しみです。これからも心より応援しております。この作品を作ってくださり、読者のことを考えてくださり、本当にありがとうございます。 (2023年2月10日 21時) (
レス) @page36 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
どこぞのオタク - ぅぴゃぁ 尊い (2023年1月22日 17時) (レス) @page25 id: 625a6655ea (このIDを非表示/違反報告)
モブZ(プロフ) - 話の内容や主人公の性格性とか荼毘の言動とかめっちゃ好きです！更新頑張って下さい！ (2023年1月22日 2時) (レス) @page24 id: 4e3074e3cf (このIDを非表示/違反報告)
燈 - 社畜に年末年始など無いのです。更新遅くてすみません、気長に待って楽しんでいただけたら幸いです。コメントありがとうございます。励みになります。 (2022年12月28日 14時) (レス) id: 9e19da6f1a (このIDを非表示/違反報告)
かもめさ - 最高すぎます…！！！もう好きでしかないです。更新を楽しみにしています！！！ (2022年12月21日 11時) (レス) id: 41ebbd34c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：燈 | 作成日時：2022年12月7日 11時
