ある日目が覚めたら、くるん兄弟の幼馴染になってました〜芋兄弟の真ん中なんて聞いてません〜 (ページ7)

今日:16 hit、昨日:42 hit、合計:2,211 hit

＊6話　夢なら＊ページ7

外は少し肌寒い。季節は秋頃だろうか。

…というか、まだ夢は醒めないのかな？醒めてほしくないけど、現実の時間がどうなってるか心配だ。

「…なぁ、A」

石畳みに隙間なく建つ家、という街並みが珍しく、キョロキョロしていると、言いにくそうにロヴィが口を開いた。

「もしかして記憶がねーんじゃねーか？」

「えっ」

「今日のお前、まるで別人だぞ、このやろー」

「そ、そんなこと…」

思わず否定しかけるが、思い直す。いつまで続くかわからない夢だとしても、現状を知りたかった。

「…いや。実は、記憶があやふやで…なんというか、自分のこともよくわからないというか…」

なんと表現したら良いか分からず、曖昧な言葉を口にすると、ロヴィーノが足を止めた。

「ロヴィ？」

「……俺らのことも忘れたのかよ？」

「…2人が兄弟で、ロヴィーノとフェリシアーノだってことは分かる、かな」

「…それだけかよ…」

ロヴィの目が潤んでいく。

「兄ちゃん…」

フェリちゃんの声も震えていて、2人にとって私が大きな存在だったのだということを知った。

「…ごめんなさい」

「…Aのせいじゃないよ。もしかしたら、思い出すかもしれないし…。やっぱり、昨日のことも覚えてないんじゃないの？」

「…うん。覚えてない」

「そっかぁ。じゃあ、ルートとギルベルトと一緒の時に話すのが良いかもしれないね」

「お前が忘れちまったからあいつらと顔合わせなきゃなんねーことになっただろうが、このやろー…」

2人の悲しげな様子に胸が締め付けられる。

夢なのに、なんでこんなにもリアルなんだろう。なんで、他の夢と違って、私が自分の意思がはっきりしてて自由に動けるんだろう。

…なんで、彼らとの思い出を覚えていないんだろう…。

重苦しい雰囲気の中、私達は無言で大学へと向かったのだった。