ある日目が覚めたら、くるん兄弟の幼馴染になってました〜芋兄弟の真ん中なんて聞いてません〜 (ページ12)

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＊11話　まるで太陽みたいな＊ページ12

講義の内容が理解できるか心配だったが、大丈夫だった。

私も医学部であったことと、この体の持ち主がとても几帳面で誰が見ても分かるようなノートをとってくれていたおかげだ。

だが、講義を受けていくうちに、私はだんだんと言いようのない不安に襲われた。

…知らない。こんな話、聞いたことない。

これが夢であるならば、私の記憶が元になって作られているはず。

私が覚えていないだけで、記憶の奥底にしまってあった、どこかで聞いた話かもしれない。それにしても、専門的すぎる。医学に関わることなら必死に勉強してきたし、必ず覚えるようにしてきた。

それなのに、だ。ここにきて全く知らない話を聞いている。

やっぱり、これは夢ではないのかもしれない…。

そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、

「わっ！？」

「おっと」

人にぶつかってしまった。尻餅をつきそうになったが、その人が抱き留めてくれたおかげで、転ばずに済んだ。

「お、Aやんか！もう大丈夫なん？今日ぐらいは休んでも良かったんやないか？」

「へ、あ、おやぶ…じゃない…アントーニョ…？」

ひぃー、完全に油断してたところに親分が！！！イケメンすぎる…！声良すぎる！！

顔が近すぎたため、慌てて彼から離れる。そのままだと心臓に悪くて話せないからね。

「昨日、ロヴィが泣きながら電話してきたわ。"Aが何も言わねぇし何も食わねぇ"って。その様子だと、元気にはなったみたいやな？」

「ま、まぁ…そうなのかな…？」

「なんや、はっきりせんなぁ。心配事でもあるん？」

「えっと、実は、記憶が曖昧な部分があって…私自身の記憶がないというか…」

はは、と空笑うと、親分は顔を顰めた。

「そうなん…？ロヴィが元気なかったのはそのせいやったんか」

「…うん。ロヴィやフェリちゃんとの思い出、覚えてないの。なんなら、兄弟だっていうギルやルートとのことだって…」

「そうなんか。それは…辛いなぁ…」

「うん…」

頭を俯かせると、親分にぽんぽんと優しく頭を触られた。

「ま、きっとなんとかなるで。忘れてしまったんやったら、新しく作っていけばええねん。過去は確かに大切やけど、でも、俺らは過去には戻れんのやから。大切なのはこれからやで！」

元気づけるように笑う親分は、まるで太陽のように眩しくて。

彼の言葉にひどく励まされたのだった。