屋上 ページ8
「…ねぇ、A」
「うん、なぁに？」
「Aはなんで痣ないの？」
ずっと思っていた疑問をAに言った。
不思議だった。
Aもいじめられているのに、なんでAの体には痣も何も見つからないんだろう。
本当はいじめられてなんかないんじゃないか。
「…まふくんはやっぱり、殴られたりとか…してるんだね」
「当たり前だよ。毎日毎日殴られる。
サンドバッグと同じだよ」
「…私はね、殴られる代わりに大切なものを奪われるの」
苦笑いをしながらAは言った。
大切なものを奪われる。
どういうことだろう。
「どっちかというと精神的に追い詰めてくるんだ。
最初はキーホルダー、次は誕生日にお母さんにもらったハンカチ。
…次に、お父さんに買ってもらった通学カバン、次に…この先は言えないや。
ストーカーされたり、ネットに個人情報書かれたり、顔写真ばらまかれたり。
おかげで視線がいつも以上に気になって怖いよ」
「そ、っか。
…聞いてごめんね。
A、いつ見ても痣とかないから、もしかしたらいじめられてないんじゃないかって疑っちゃって…」
「いいよ。
実際、疑われても仕方ないもん。
…女の子って、目に見えないところを狙って攻撃するから一目見ただけじゃわかんないもん」
あんまり悲しそうな顔をするから罪悪感がすごい。
君がそんな顔してると、僕まで悲しくなるんだよ。
「ご、ごめん…
…お、お詫びになんでもする…」
「あ、今なんでもって言った？言ったよね？？」
待ってましたと言わんばかりにAが顔を輝かせて僕を見る。
…最初からそれが目的だったな。
「…それが目的だったでしょ。
あんま痛くないやつならいいよ」
「うん！
じゃあ死ぬの延期にしよ」
「…え？」
Aの口から出た一言にびっくりして思わず立ち上がる。
「な、なんで？」
「…私ね、ここで君と話すの楽しみになっちゃった。
生きてたら、確実にここでまた君と話せる。
でも死んだら…わかんないじゃん。
…だから、せめてもうちょっと、君と一緒にいれる時間を楽しみにしてもいいかな」
…こんな世界は嫌いだ。
いじめがあって、大人は見て見ぬ振りをする。だから僕は早く死にたかった。…なのに、ずるいよ、君は。そんなの言われたら死にたくなくなっちゃう。でもまだ君と話していたいのは僕も同じだから。
「うん、いいよ」
考えるまでもなく、僕は頷いた。
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うー(プロフ) - ももんがさん» ありがとうございます…！！いやもうありがとうだけじゃ足りない… (2019年8月14日 12時) (
レス) id: e19a932eed (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - 涙が止まらなかったです！最高に面白かったです！ (2019年8月14日 11時) (レス) id: 5f1c65421c (このIDを非表示/違反報告)
うー(プロフ) - 桜さん» これ読んでくれたんですか…！！ありがとうございます！ (2019年8月4日 12時) (レス) id: e19a932eed (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 涙が出てしまいました！ (2019年8月4日 5時) (レス) id: 6f752fa416 (このIDを非表示/違反報告)
うー(プロフ) - おーさんさん» いやもう本当にありがたい…… (2019年7月31日 8時) (レス) id: e19a932eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うー | 作成日時：2019年5月6日 10時
