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考えるのをやめよう、と思えば思うほど考えてしまうのが人間というもので、それは私も例外ではなかった。休み時間も気がつけば彼を目で追ってしまっていたし、その事について考えすぎて授業中ぼーっとしていたら当てられた問題に答えられず先生に軽く叱られた。しかしそうやって彼の事を割とずっと見ていても、目すら合わない。当たり前だ、やはり席が隣の時に話せていたのは彼の義務感の延長であって、元々住んでいる世界が違ったのだ。気付けばもう放課後。期待してしまっていた自分も馬鹿馬鹿しいが、やはり少し落ち込む。でも自分から声をかけるわけにもいかないし、諦めて友達と帰ろうとしていたその時、
「A、ちょっと」
名前を呼ばれて後ろを振り向くと、そこには国見くんの姿が。急に声をかけられて私が何も返せないでいると、「口開けて」と彼は言う。「え」と私が状況を飲み込めず困惑しているところに、拍子に開いた口に何かを放り込まれた。ビックリして口の中に入ったものをもごもご転がしていると、国見くんは言った。
「これお返し。ホワイトデーの」
表情一つ変えずに彼は説明する。私は「ありがと」と口をもごもごさせたまま答えた。状況がようやく飲み込め、口の中の味が識別できる。塩キャラメルだ。私が普段食べているものと少し味が違う気がしたけれど。
「これおいし」
私がぽつりと呟くと、国見くんの目が少し輝いたような。
「わかる?Aに前もらったやつもいいんだけど、やっぱりこれ好きなんだよね」
うんうん、と頷いて私は肯定の気持ちを示す。
「遅くなってごめん。友達と話しててさっきホワイトデーのこと思い出した。忘れてない?って言ってくれれば良かったのに」
「いや、でもわたし塩キャラメル1個あげただけだしお返しされるほどでは……」
そう言いかけたところで、
「でも期待して待ってたでしょ?」
先程まで無表情だった彼がにやりと笑う。そんな彼の表情に思わずどきりとしてしまった。
「べ、別に期待なんか」
慌てる私に「ふーん?」と首をかしげる国見くん。彼は「国見、早く行くぞー」とバレー部の子達に呼ばれ、「今行く」と返事をすると、「じゃ」と私に言い残し、そのまま部活に行ってしまった。
「あれ、もしかして2人付き合ってる?」
一部始終を見ていた友達が口に手を当て驚いたようにそんなことを言うけれど、
「んな訳ないじゃん」
そんな訳ない、彼の方がきっと何枚も何十枚も上手(うわて)。

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設定タグ:国見英 , ハイキュー   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:名乗るほどのものではありません! | 作成日時:2024年3月14日 9時

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