【国見英】つめこみ短編集 (ページ3)

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ホワイトデーページ3

「ねえこれ。この前のお返し」
「えー、これ有名なスイーツショップのところのやつじゃん！ありがとー」
朝、教室の隅でそんなことを話すクラスメイトの男女の会話が聞こえてくる。三月十四日……眠い目を擦りながら今日がホワイトデーである事を思い出した。まあ私には関係ないか、テスト期間でバレンタインには誰にも＂ほぼ＂何も渡せてないし。うちの学校でホワイトデーは、テスト期間だろうと関係なくイベント事を楽しもうとする所謂一軍の方々にのみ関係のある事なのだ。なんて自分に言い聞かせながら私は彼……ちょうど私の席とは対角線上の後方の席に座る国見くんに目をやる。彼は大きな身体を器用に畳み、机に突っ伏してすやすやと眠っていた。眠たいよね、わかる。彼の姿を見ながら、私は一か月前のバレンタインデーの事を思い出す。
三月になって席替えを行い、席が離れてしまってから国見くんとは一度も話していない。元々、席が一緒になるまでは話したことなんてなかったし、席が隣の時も話してはいたけれど特別仲が良かったわけでもなかった。隣の席で授業中に話さないといけないからその延長で話してくれていただけなのだろう。
「ホワイトデー、期待しててね」
でもどうしてもあの時の言葉が忘れられなかった。いや、あんなのやっぱりその場のノリで言ったことか？彼、よく掴めないところが多いし、私があげたの塩キャラメル一つだし。もうきっと忘れてしまっているに違いない。無駄な期待は良くない、私はそれ以上その事について考えるのをやめた。

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