Mirror.29 ページ29
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無機質な時計の音が無残にも俺達を横目に過ぎていく。ルーク先輩が出て行った今、この部屋に取り残されたのは当事者である俺とヴィル寮長のみ
『……すみません。俺も自分の口から言って無くて……』
「今更でしょ。アタシだってこれだけ過ごしてて気付けなかったんたから」
つまりお互い様……と言う事なのだろうか。相反して空気は死ぬ程圧迫したままだが
『……俺、異世界から何らかの作用で転移して来たんですけど、学園長のご厚意と善意でポムフィオーレ寮に入れてくれたんです。
入学式当日に辞退した人が居たみたいで、余った枠に入れてもらう事が出来て……このマジカルペンも魔法使えない俺にとっては猫に小判、お飾りみたいなものなんですけどね』
乾いた笑いと饒舌がその場しのぎに徹して時間を稼いだ。何か言ってほしい。何か、何か。
「……じゃあ授業はどうしてるの」
『あっ、授業は……錬金術は付き添いを組んで一緒に……飛行術は体質が無いので見学してて、魔法史は頑張ってるんですけど馬の耳に念仏でからっきし……って、俺全然駄目ですね』
自虐ネタも甚だしく場を和ませようと努めるが効果無し。嘗てこんなに虚しい事があっただろうか
あはは、なんて笑いながら後頭部に回した手を力無く下ろして自嘲気味に呟いた
『__寮長。俺、転寮しましょうか』
「__は?」
ーーーーーー
『俺が居たら貴方にとって恥晒しでしょう』
これ程までに見た事の無い、天真爛漫で無垢な男から出たとは信じ難い発言に目を見開く。常時アホみたいに笑顔を振り撒く男が初めて見せた悲壮感に一瞬たじろいだ
「__転寮ですって?身の丈知らずも甚だしい、誰にそんな口聞いてるの」
バロメーターが突破する感情は言いようの無い怒り。沸々と湧く熱に、Aの前できつく睨み上げた
『アンタ今の顔鏡で見てみなさい!
今までで一番美しくないわ』
飛ばした喝に怯んだAは目を伏せ黙りこくる。その一連の動作でさえもどかしく余計に怒りを仰いだ
「アンタもアタシも。一度頭を冷やすべきだわ。
今の状況でアンタと話す事なんて無い」
Aの無駄に広い背中を押し部屋から追放してやれば、閉じた先の扉からすみません、とだけ小さく聞こえて足音が遠ざかって行く
扉に背を着いたままずるずると情けなくへたり込んで腕に顔を埋めた
「……謝ってんじゃないわよバカ……」
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映国 - パピさん» おコメント嬉しいですありがとうございます……!!パピ様に褒めちぎって頂き光栄でございます。文脈的にも所々おかしなところがあったかと思いますが完結まで読んで頂き感謝しかございません、これからのそのありがたきお言葉を胸に精進して参りたいと思います!! (2021年3月6日 11時) (レス) id: 887c7da550 (このIDを非表示/違反報告)
パピ(プロフ) - 神作品過ぎて…、笑いあり涙ありもう語彙力が溶けるレベルで神作でした! 後半の儚さがもうたまらなく好きです。今更ですけど完結おめでとうございます! お疲れ様でした! (2021年3月2日 19時) (レス) id: cbf5dcb5ea (このIDを非表示/違反報告)
映国 - 美月さん» すみませんレス返せていませんでした!! (2020年9月30日 7時) (レス) id: 887c7da550 (このIDを非表示/違反報告)
映国 - みっ……!?!?美月さん!!!嬉しいですありがとうございます大好きです!!今回はいつもとテイストを変えてみました!!内容の面白さは保証出来ませんがヴィル様愛を書き散らした作品となっております!!楽しんで頂けたら幸いです!!!! (2020年9月30日 6時) (レス) id: 887c7da550 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 面白そうと思って覗きに来たら……映国さんだったのですね………映国さんの愛するヴィル様の夢小説……じっくり楽しませていただきます………大好きです………(語彙消失) (2020年9月29日 19時) (レス) id: 48104f3cfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:映国 | 作成日時:2020年7月12日 16時