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「こちらこそ、宜しくお願い致します!控室へご案内致します。本日2名様とのことで、同室で承っております。」

「あ、はい。」


同室かぁ…私はいいけど、先輩は大丈夫かな…



「こちらになります。何かございましたら、スタッフにお声かけ下さい。」

「はい、ありがとうございます」


スタッフが去ると、控室の自分の名前を確認した。

え…


その隣にあった名前は



「失礼します」


ノックをすると、返事が無く
迷ったが控室は一つしか用意されて無い様だった為、部屋へ入った。



「あの…先輩」

「…」

「土岐先輩」

「…」

「どうして、喋らないのですか…?」


ドキドキしているA
土岐は椅子に座って足を組み、台本をチェックしている



「あの…」

「残ってんだよ」


久しぶりに聞いた声は、いつもより低くて驚いた



「残って…る…?」

「お前が、俺に怯える顔」

「…」

「俺になんて、会いたくなかっただろ。だからせめて、声は聞かせない様にしようと思って」

「…お気遣い、頂いて…」


無意識に震える声



「無理して話す必要ない。舞台では嫌でも演技しなきゃならないんだから。」

「…」

「着替えるだろ。30分後、戻ってくる」


そう言って控室を出て行った。


そんな風に考えてくれてたんだ…
私の為に……

泣きそうになりながら着替えを済ませた。
メイクを直していると、ノックが



「はい」


返事をすると、戻って来た土岐。

そのまま椅子に座りスマホを見ていた。



40分後…



コンコンコン



「はい!」


立ち上がり、ドアを開けたA



「お待たせ致しました、お時間ですのでご移動お願い致します!」

「はい、わかりました」


一度ドアを閉め、鏡を確認し台本を手にした時、
土岐が上着を脱いだ。



「…っ!」


その衣装を見て笑ってしまったA



「おい」

「す、すみません…」

「…」


先に控室を出て行った土岐を急いで追いかけた

舞台袖でマイクを受け取ると、会場モニターには映像が流れ始めていた。



「並木」

「はいっ」

「ごめんな。後でちゃんと謝るから」

「いえ…」

「イベントに来てるお客さんは俺らの事情とは関係ないから…楽しくやりきりたい。俺の勝手な思いだけど…俺を俺と思わなくていい。元々は佐倉だったわけだし、お前には気の毒だけど」

「先輩」

「え?」

「そのお気持ちだけで、十分です。私、頑張ります」





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作者名:のまじゅ♪ | 作成日時:2024年2月25日 13時

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