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「俺は…Aを守りたかった。知らないかもしれないけど、この業界にはしきたりがある」
手を止めて聞いていたA、プリンをテーブルに置いた。
「Aが頑張って来たところを一番近くで見てきたから…そんなしきたりなんかで潰されたくなかった。って…言い訳に聞こえるよね」
ゆっくり首を横に振ったA
だが、
そうだな。
そう心でつぶやいた斉藤
「でも、もうAには守ってくれる人たちがいるから大丈夫だよね。」
「…」
「俺は…Aの為ってずっと思ってきたことも、自分の為だったのかもしれない。」
手に持っているプリンのカップが震えている保住
「先輩に言われて気づいたよ。正直、腑に落ちて…すごく胸が痛かったんだ。認めたくなくて足掻いて、そしたら取り返し付かないことになって、今更気づいた。もうAとは会っちゃいけないって」
「そんな…」
「Aにも、自分にもただ負担になるだけなのに…そんなことも気づかないまま傷つけてたよ。自分の気持ちを伝え続ければいつか戻ってくるって、勝手にそう思ってた。逆効果なのに」
そう言って涙目で笑顔を見せた保住
「最後に…Aの笑顔が見れて良かった。だから、もう泣かないで」
気づいたら涙が流れていたA
「俺のことは、もう思い出さないで。必ず幸せになってね。」
立ち上がった保住
「見送りはいらないからね。…さようなら、元気で」
そう言うと、江口と斉藤に頭を下げ、出て行った。
「…っ、」
両手で顔を覆って膝に伏せて泣いているA
隣に座ると、頭を撫で背中をポンポン撫でた斉藤
「私は、保住先輩に愛されていたのでしょうか…」
涙で濡れた声
「記憶が無いはずなのに、涙が止まりません…」
先輩の表情が目に焼き付いている。
先輩の気持ちを考えると、胸が苦しくて…凄く辛い……─
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作者名:のまじゅ♪ | 作成日時:2024年2月25日 13時