LINARIA─この恋に気付いて─ (ページ9)

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『……ほら、行きなよ、テヒョン？』

そう言ってヒョンの背中を優しく押す彼女は、
苦しそうに微笑んでいた。

涙は浮かんでいない…

つらいはずなのに、
行って欲しくないって言えばいいのに、

それでも彼女はヒョンに言う。

『…今度は、ちゃんと守ってあげなきゃ。ね？』

それに対してヒョンはしばらく
肩を震わせ泣いた後、

TH『………A、ごめん。』

『うぅん、テヒョンが後悔しないように生きて？
私はたくさん幸せだったから…

これからは友達としてそばに居させてね？』

TH『……うん、ありがとう。だいすき、A。』

そう言うとヒョンはユジンヌナを
抱き締めに行ったんだ。

『…がんばれ、テヒョン。』

ヒョンの遠ざかる背中に
そう呟く彼女は
慈しむようないつもの微笑みを
向けると、
２人とは反対方向に歩いていく。

JM『…Aって、強いね。』
「…そんなわけ、ないです。」

そう言って俺は、
Aヌナを追い掛けた。

自分に何が出来るのかなんて
分からないけど、
それでも追い掛けない選択肢は
なかった。

「ヌナ！！！Aヌナ！！！」

俺の声に反応して振り返る彼女。

『………ぐぅ、ごめんね？心配かけたね？』

でも大丈夫、

そう言って無理に微笑む彼女が
今にも壊れてしまいそうで
俺は思わず抱き締めた。

『…ぇ、ちょ、ぐ、ぐぅ？！』

「…うるさいです。ヒョンの…代わりです。」

離れようと小さく抵抗する彼女を
ぎゅっと抱き締めそう言うと、

『……っ、ぐぅのばか。』

そう言って抵抗を止め、
俺の腕の中で声を押し殺して
ひとしきり泣いた。

「……ヌナにだけは言われたくないです。」

後にも先にも、
彼女の涙を見たのはこの日だけ。

彼女は分かっていた。
これでいつものメンバーから
離れてしまえば、
ヒョンの負担になることを。

だから、
今までと変わらず接している。
変わったことは、

ヒョンの隣に座ることはないこと。

ヒョンの隣にはユジンヌナが居ること。

この状況がどれほど苦しいのか、
きっと少しだけ理解出来る俺。

JM『あのドラマの女優さん美人だよね！』
ﾕｼﾞﾝ『確かに！あのロングヘアー、私もロングだけどあんなに綺麗にまとまらないもん。いっそのこと切ろうかな？』

TH『えーー俺がロング好きだからユジナはそのまんまがいいよ～』

この他愛もない会話に無性に
腹が立つ。