せっとりすと。 (ページ42)

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─としみつside─

俺が尾行していた事に気付いていたらしいこの女。

話を聞けば聞くほど、あの店の中でてつやに微笑みかける女とは全く違う女に見える。

─── 金金金 ───

なんか、可哀相な人だな…
そんな事を思うと同時に、純粋にこんな女を思って恋い焦がれてるてつやの気持ちを考えると、無償に腹が立つ。

としみつ
「……頼むからうちのてつやをあんたみたいな人と同じにしないでくれ。」

男だったら殴ってた…こんなクソみたいな女でも女には変わりないからグッと拳を握って頭を下げた。

『ふふふっ、良いわよ、てつやくんを切った所で痛くも痒くもないから、私はね。』

そう言った女は、おもむろに携帯を開いたと思えば俺に画面が見えるようにしてスピーカーボタンを押した。

発信中：てつや(YouTuber)

────080-XXXX-XXXX─────

『あ、もしもしてつやくん？』
てつや
《わぁ！Aちゃんだぁ！！マジ嬉しいんですけど～！♪》

そんなてつやの嬉しそうな声を俺に聞かせ、本当にこれで良いのか？と戸惑いが生じる俺に冷たく笑った彼女が、
視線を合わせながら、

『もう連絡もしてこないで欲しいし、お店にも来ないで。』
てつや
《…え？どうして？頼まれたから東京バナナも買ってきたのに…》

そんなてつやの寂しそうな声に心が傷んで顔を背けようとするけれど、彼女の綺麗で冷たい手が俺の頬を包んで阻まれる。

ちゃんと見て、聞いてなさいと言わんばかりに俺の目をしっかり見据えた彼女は、

『ごめんね、ハッキリ言わせて貰うと、新しい金蔓が見つかったから、あなたに使う時間が惜しいのよ。だからもうお店に来ても私はあなたに会わないわ。それじゃ。』

そう言って通話ボタンを切った。

としみつ
「……何もそんな言い方んっ！！…」

酷過ぎるだろ、と言いかけた俺の唇を人差し指で止めた彼女が、

『何言ってるの？あなたが私に求めた事を無償でしてあげただけじゃない。さぁ、あなたもあんな寂しそうにしているお友達が心配でしょう？だからもう、帰りなさい。』

そう冷たく笑って言った後、これだから若い客は面倒くさいのよ…なんて言いながら車を降りてマンションへ戻っていった。

余計なお世話だったんじゃないか───…

心配で家に寄ると、キツめの酒を呑みながら泣いているてつやを見てふとそんな事を思ったけど、あの女の冷たい瞳を思い出せば、

これで良かったんだ───…

きっと間違ってない、そう強く思った。