せっとりすと。 (ページ12)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:29,910 hit

大切なキミへ。(ymmr) ページ12

─ゆめまるside─

──────…

───…

ゆめまる
「荷物はこれだけ？」
『うん、もうだいたいの物送ったし。』

ゆめまる
「いつ、こっち何時発だっけ？」
『明日14時頃、かな。』

ゆめまる
「じゃあ、また明日迎えに行くね。」
『ありがとう、…じゃあ合鍵、返すね。』

ﾁｬﾘｯ…

ゆめまる
「………うん。」
『…ふふっ、何しんみりしてるん？ゆめくんらしくないよ？』

ゆめまる
「……いや、幸せに出来なかったなぁって。」
『…うぅん、そんなことないよ。明日は笑って見送ってね？』

ゆめまる
「……ごめんね。A。」

────────…

───…

知らなかった、一緒に住んでいた彼女が夢を追い掛ける決意をしてたなんて。

いや違う、専門学校を通い終えてYouTuberとしての活動が忙しくなった俺は、いつだって強がって“私は大丈夫”なんて笑顔を見せていた彼女に甘え続けて、
しまいには、いつからか彼女の変化を気付こうともしなかっただけだ。

元々そんなに一途な訳じゃない俺がこんなに長く彼女と過ごせていたのは、紛れもなく彼女の寛大な愛情のお陰。
言葉にするなら、それはどんな俺でも受け止めてくれる…そんな柔らかくて澄み切った純粋な愛情。

どれだけ俺が悪くて喧嘩したって、最後はいつだって笑って許してくれたAじゃなかったら、きっとこんな風に一緒に居るなんて出来なかっただろうな。

そんな風に、不器用な位真っ直ぐに俺だけを見ててくれたって、今なら分かるよ。

そんなことを考えているのは、別れた彼女を実家に送り届けた帰り道。
ちょっと肌寒くなった夜の気温が鼻をツンと刺激して、チクチクって心まで切なくする。

『あのさ、ゆめくん話が…』
ゆめまる
「ごめん今、動画で使う準備あるから。」

『ねぇゆめくん私さ、』
ゆめまる
「ごめん今ちょっと忙しい。」

『今日何時に帰ってくる？』
「ごめん企画で今から東京行くことになって。」

────…

──…

ゆめまる
「あー！久々にゆっくり出来る～！おいで、A？」

『…ゆめくん、私ね、東京で働くって決めたから。』

ゆめまる
「…………え？」

『ごめんね、前々から相談しようとしてたんだけど、でもやっぱり自分の事は自分で決めなきゃって思って。

………だから、別れよう？』

ゆめまる
「……なんで？遠距離だって出来」

『無理！だよ、…これ以上寂しくなるのは私には無理。だから、お別れ。ね？』

ゆめまる
「……………うん、分かった。」