74話 ページ29
しかし、驚くのはまだ早かった。
「…ふむ、そうか。お前もそういう年頃になったか」
続くシヴァンの発言に、ますます皆の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「ついこの間まで人形や玩具を欲しがったものだが…成長とは速いものだな」
嬉しそうにシヴァンがカトレアを撫でて、そして言う。
「と、いうことだ、グルッペン君。この娘、いくらなら譲ってくれるかね？」
その指は真っ直ぐにアイルを指している。
「…その前に、１つよろしいですか」
「あぁ。何だ、予算の限度か？」
完全に、アイルのことをヒトではない、モノとして見ている発言だった。
そのショックで呆然とするアイルをさりげなくトントンが後ろに庇い、オスマンがその手を離さないとばかりに握りしめる。
「どうやら、そちらの国と我が国では雇用形体に大きな差があるらしい。こちらでは、雇用の交渉は主ではなく本人と雇用者の契約によってのみ適用されます」
グルッペンにとっても大切な幼馴染みの大切な親友。表にこそ出さないが、心中穏やかではない。
…しかし、そのオブラートは大国の長には通用しない。
「雇用？何を言っているんだ？…その娘は平民だろう？」
「えぇ。そうよね、アイルさん？」
「は…い…」
視線に耐えかねて、かすれた声でアイルが返事する。
「王族ではなく、貴族でもない人間には、雇用の関係性は適用されない。全てが主の采配に委ねられる」
それが自然でそれが当たり前。
だからこそ、貴族階級間では、初めて自分で選んで人間を“買う”ことは成長の証なのだ。
「そうか、この国はそういうシステムではないのだな。婚姻したあかつきには是非取り入れてくれ」
はっはっは、とシヴァンが笑う。氷よりも冷たい視線が向けられていることには気がつかない。
「話を戻そうか。グルッペン君。君が第一の主になりたまえ。その娘、いくらで売る？」
さて、この狂った倫理感がしみわたった男にどう話せばいいものかとグルッペンが考え、発言する前に
「______ふざけんな」
優秀な外交官が、総統ならびに書記長が言おうとした言葉を吐き捨てた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 599人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポピー(プロフ) - もし、“お知らせ”に記されている中から選ぶのなら、トン氏で。記されていなくても良いのなら、ゾム氏をよろしくお願いします！設定が凝っていて面白いのでつい全部一気読みしちゃいました！更新頑張ってください！ (2018年11月25日 21時) (
レス) id: 8149f9681e (このIDを非表示/違反報告)
ななか(プロフ) - ロボロに一票。最近の生きがいです、ありがとうございます。 (2018年11月22日 23時) (レス) id: c06d19efdc (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - ももさん» す、素敵な文章…！？ありがとうございます…！はい、トントンさん二票目でございますね！そしてまさかのテストの応援まで…！実は真の敵は明後日だったりします(笑) (2018年11月20日 15時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - 柏餅さん» 回答ありがとうございます！ロボロさん一票いただきました！ (2018年11月20日 15時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - 白人さん» 回答ありがとうございます、トントンさん一票目です (2018年11月20日 15時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マロウブルー | 作成日時：2018年11月7日 17時
