4 ページ38
.
背中に、嫌な汗が流れる。
なんで、なんでそんなことを言うんだ。
動揺する私をよそに彼は言葉を続ける。
「本当は俺なんていなくてもAは平気なのに」
「俺が、Aの交友関係も人生も縛り付けてる」
「そんなの分かってる。駄目だって、迷惑だって、そんなの俺が一番分かってる」
「でも、でも、」
ああ、と心のどこかで合点がいった。
誰かに言われたんだろうな。そんなようなことを。
ふと、告白をしてきた男の姿が頭に浮かぶ。
あの男が言ってきたことと今の小鳥遊の言葉が酷似しているな、と。
いや、これは私の憶測の範疇を出ない話だが。
……まあ、あの男じゃなかったとしても。でも。なんか。
「でも俺、Aのことが好き」
「分かってるけど、離れたくない、し、離してあげられない」
「迷惑かけてごめんね、でも俺、」
……なんか。
先程の教室での件と相まって、小鳥遊のこの言い方は妙に癪に障った。
「…………皆、勝手に私の気持ちを決めつけないでほしいよね」
「……え、」
腰に回っていた彼の腕を無理矢理引きはがす。
ぽろぽろとその綺麗な双眼から涙を零しながらもその表情は驚きに満ちていた。
ああ、もう。むかつくなあ。
目の前で涙を流す彼の胸ぐらを掴み、良く回る彼のその口に私の唇を押し付けた。
小鳥遊は、え、とか、なんで、とか、言葉にならない声をあげている。
なんで、なんて。そんなの。
「…………なんで、はこっちの台詞なんですけど」
「……は、」
「なんで、迷惑なんて決めつけんの」
「え、あ……?A……?」
さっきから聞いてれば、
駄目だとか迷惑だとかそんな勝手なことばっかりだ。
一度でも私がそんなことを言ったことがあったのか。
「……そりゃ、小鳥遊の言う通りだよ。正直、小鳥遊がいなくたって、
そりゃいい歳なんだから課題だって出来るし朝だって起きれるし。
大抵のことは自分で出来るよ」
「……」
「でも、それでも小鳥遊の事頼ってるのは、その、そういうことでしょ」
自分でも些か横暴な意見であるとは思ったが、言わざるを得なかった。
前に小鳥遊は言ったのだ。
私のことを閉じ込めたいとか。私がいないと死んじゃうとか。
そんなこと言っちゃうくらい私のことが好きな癖に。
何でこんなに信用されていないんだ。
「……小鳥遊ばっか好きだなんて思わないでよ」
そう言って彼の胸に再び顔を埋めれば、頭上から息を吞む音が聞こえた。
.
26人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もぐもぐいちご(プロフ) - realさん» 返信遅れてしまってすみません;;realさんコメントありがとうございます!イラストも見ていただけて本当に嬉しいです…!これからも不定期ではありますが更新していきますのでよろしくお願い致します…! (2023年4月24日 2時) (レス) @page39 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - イラストの方から来ました!めっちゃきゅんきゅんしました(*´-`)作者さまのペースでの更新楽しみにしてます! (2023年4月10日 12時) (レス) @page3 id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - 朱まぐさん» 返信遅れてすみません…!男の子視点、ヒロインは好きな子なのでとにかくかわいく見えるように意識してたのでそこに言及して頂けるの本当にめちゃめちゃ嬉しいです…!コメントありがとうございます!これからも拙文ではありますが楽しんで頂けると幸いです! (2022年12月11日 12時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。男の子全員素敵です!9ページ目では佐藤君目線になってヒロイン可愛いと思ってしまいました!笑読んでて癒されました☺︎素敵な作品ありがとうございます。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2022年12月5日 22時) (レス) id: 0c936a9b54 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - かんずめさん» コメントありがとうございます!下でも似たようなことを書いたのですが己の生み出したキャラたちを好きと言って頂けるの、本当作者冥利に尽きます…!はちゃめちゃに嬉しいです、これからも拙い文ではありますがお付き合い頂けると幸いです…! (2022年11月16日 20時) (レス) @page22 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もぐもぐいちご | 作成日時:2022年10月30日 17時