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にこりと此方に微笑む先輩。
てっきりあの人と一緒かと思ったが、周囲を見渡してもそれらしい姿は見えない。
「……なんで……、さっきの女の人は?」
「もう別れたよ」
『お腹空いたね、俺何にしようかな』と
何事もなかったかのように私の後ろからメニューを覗き込む先輩。
彼のふわふわの髪が耳を撫でて擽ったい。
「……あの人も、来るのかと思った」
「え、なんで?あの子は関係ないでしょ、
俺はAと約束してるんだから」
心底不思議そうな顔をする先輩。
本当に、あの人と一緒にご飯を食べるという発想がなかったのだろう。
あの人よりも私のことを優先してくれた。
さっきまでのもやもやした感情が凪いでいくのが分かる。
「…………」
「そうだ、学食食べたら買い物も行こうか。マフラーほしいって言ってたよね」
……覚えててくれたんだ。
マフラーが欲しい、なんて。この前ぽろっと言っただけだったのに。
先輩はどこまで私を甘やかせば気が済むのか。
「……せんぱい、」
「ん?」
券売機へ向かおうとする先輩の手を握る。
先輩は酷く穏やかな顔で私の顔を覗き込んだ。
ああ、ああ。もう、本当に、
「……だいすきです、先輩がいちばん」
「……!」
突然のことに驚いたのか、目を見開いた先輩だったが
その後すぐにふにゃりと笑う。
ああ、私を甘やかすときに見せてくれるこの顔もすきだ。
繋いだ手を離さないように、もう一度強く握る。彼は小さく声を出して笑った。
「……俺も、Aが一番好きだよ」
*
「学食?えー、いいなぁ、私もついてっちゃおうかな〜」
そう言いながら、こちらを覗き込んで
にこりと微笑む彼女は、同じサークル所属で、最近何かと声を掛けてくる子だった。
「ていうか、あんなに可愛い妹がいるなんて知らなかった」
教えてくれればいいのに、そう言って彼女は俺の肩をぽんと叩く。
……妹だなんて一言でも言っただろうか。
「……俺、妹だなんて言ったっけ、」
「え、でも彼女じゃないでしょ?あれは」
そう言って彼女は、先程Aが去っていった方を見てくすりと笑う。
こういうことに敏い訳ではないが
少なくとも今のが肯定的な発言ではないことは分かる。
俺は、目の前の彼女を見つめた。途端に頬を赤らめる彼女。
俺はにこりと微笑んで言った。
「妹でも彼女でもないけど、あの子以上に大事な女の子いないんだ。
……ごめんね?」
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もぐもぐいちご(プロフ) - realさん» 返信遅れてしまってすみません;;realさんコメントありがとうございます!イラストも見ていただけて本当に嬉しいです…!これからも不定期ではありますが更新していきますのでよろしくお願い致します…! (2023年4月24日 2時) (レス) @page39 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - イラストの方から来ました!めっちゃきゅんきゅんしました(*´-`)作者さまのペースでの更新楽しみにしてます! (2023年4月10日 12時) (レス) @page3 id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - 朱まぐさん» 返信遅れてすみません…!男の子視点、ヒロインは好きな子なのでとにかくかわいく見えるように意識してたのでそこに言及して頂けるの本当にめちゃめちゃ嬉しいです…!コメントありがとうございます!これからも拙文ではありますが楽しんで頂けると幸いです! (2022年12月11日 12時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。男の子全員素敵です!9ページ目では佐藤君目線になってヒロイン可愛いと思ってしまいました!笑読んでて癒されました☺︎素敵な作品ありがとうございます。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2022年12月5日 22時) (レス) id: 0c936a9b54 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - かんずめさん» コメントありがとうございます!下でも似たようなことを書いたのですが己の生み出したキャラたちを好きと言って頂けるの、本当作者冥利に尽きます…!はちゃめちゃに嬉しいです、これからも拙い文ではありますがお付き合い頂けると幸いです…! (2022年11月16日 20時) (レス) @page22 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もぐもぐいちご | 作成日時:2022年10月30日 17時