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デレデレ男子の真意。 ページ12

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それは、俺の人生の中でも特筆すべき出来事だったと思う。



「近所に住むAちゃんよ、あんたより2つも下の子だから、仲良くしてあげな」




これが、俺と彼女の最初の出会いだった。
母親に促され、おずおずと出てきた彼女は、人見知りだったのだろう。
その顔は今にも泣きそうだった。

当時は自分自身も、まだ10歳にも満たない子供であったが、
その時は幼心に守ってあげたいと、勝手に加護欲のような感情を抱いたのを覚えている。

頑なにこちらを見ず、地面から視線を外さない彼女に
俺は出来る限り笑みを浮かべて声を掛けた。



「大丈夫だよ。Aちゃん、」



こんな声が出せたのか、と自分でも思うほど柔らかく聞こえる声音。
それと同時に、漸く彼女は目線をこちらに向けた。

その表情は、20歳を超えた今でも鮮明に思い出せる。

緊張からか、その大きな目にいっぱい涙を溜めて、
でもその表情は安心したような、吃驚したような。

 

――――その顔を見たときに俺は決めたのだ。


俺は、俺だけは、何があっても絶対にこの子の味方になってあげよう、と。
世界中を敵に回しても俺だけは彼女の味方なのだと、当時は本気でそう思っていた。

出会ったばかりの少女になぜそこまでの感情を抱けるのか。
そう問われれば、万人が納得する理由は提示できないだろう。

俺が一人っ子だったから、妹のような存在が出来て舞い上がっていたからか。
または、俺に心を開いてくれたあの瞬間が、あの表情が忘れられないからかもしれない。

明確な理由は自分でも分からない。

ただ1つだけ言えるのは、
あの日、Aに会ったあの時から、俺の中でAはとても大きな存在になっていて、
そしてそれは今でも俺の中の大部分を占めているのだということだ。


好きだとか、そんな軽い言葉では、10年以上も抱き続け成長したこの感情は到底言い表せない。


これはもっと大きくて、重たくて。嗚呼、これが俗にいうところの愛なのだと。
俺はそう自己解釈して、自分には手に余る程の、大きすぎるこの感情に折り合いをつけている。


そう。こうして長々と思考を巡らせたが、答えは至って単純なのだ。

 


――――俺は、二宮Aという人間が愛しくて仕方がない。

 

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設定タグ:オリジナル , 短編集 , 属性別男子   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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もぐもぐいちご(プロフ) - realさん» 返信遅れてしまってすみません;;realさんコメントありがとうございます!イラストも見ていただけて本当に嬉しいです…!これからも不定期ではありますが更新していきますのでよろしくお願い致します…! (2023年4月24日 2時) (レス) @page39 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - イラストの方から来ました!めっちゃきゅんきゅんしました(*´-`)作者さまのペースでの更新楽しみにしてます! (2023年4月10日 12時) (レス) @page3 id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - 朱まぐさん» 返信遅れてすみません…!男の子視点、ヒロインは好きな子なのでとにかくかわいく見えるように意識してたのでそこに言及して頂けるの本当にめちゃめちゃ嬉しいです…!コメントありがとうございます!これからも拙文ではありますが楽しんで頂けると幸いです! (2022年12月11日 12時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。男の子全員素敵です!9ページ目では佐藤君目線になってヒロイン可愛いと思ってしまいました!笑読んでて癒されました☺︎素敵な作品ありがとうございます。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2022年12月5日 22時) (レス) id: 0c936a9b54 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - かんずめさん» コメントありがとうございます!下でも似たようなことを書いたのですが己の生み出したキャラたちを好きと言って頂けるの、本当作者冥利に尽きます…!はちゃめちゃに嬉しいです、これからも拙い文ではありますがお付き合い頂けると幸いです…! (2022年11月16日 20時) (レス) @page22 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もぐもぐいちご | 作成日時:2022年10月30日 17時

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