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突然泣き出した私に、彼はポケットティッシュを差し出してくれる。
彼は酷く困惑した様子だった。
「……おい、二宮、どうした」
「ほんとごめん、ごめんね、でも、でも」
思わず彼のティッシュを差し出す手を掴んでしまった。
ああ、こんなこと言われたらもっと困らせちゃうかな。でも。
「……きらいにならないで、」
「――――……は?」
「私のこと、嫌いにならないで……」
彼は『何を言っているんだお前』と私の顔を覗き込む。
何言ってんだってなんだ、こっちは本気で言ってるのに。
ぼろぼろと出る涙を彼のくれたティッシュで拭う。
「な、何言ってんだって何……わたしは、真剣に、」
「――――いや、意味が分からなくて、」
恐らく彼は本当に分かっていないのだろう。
困惑しているのが目に見えて分かる。
……いや、だとしても何言ってんだお前はなくないか?
そもそも、佐藤くんが私のことをあんな風に特別扱いするから
こうして勘違い女が生まれてしまったというのに。
酷い責任転嫁だと分かっていたが、今の私には口を噤むことができなかった。
「そもそも、佐藤くんが変なこと言うからいけないんだよ」
「……覚えはないが、一旦聞こう」
「か、可愛いとか、お前だけだとか、変なこと言うから」
彼はふ、と小さく笑った。何笑ってるんだ。
「勘違いするからやめてって言ったのに」
「私、佐藤くんが思うような良い子じゃないんだよ」
「あんなこと言われたら、そんなの、」
好きになるに決まってるじゃん、と
続けようとした言葉は彼の口唇に飲み込まれた。
彼の手が頬を撫でる感触と、
誰も居ない教室に響く控えめなリップ音で漸く自分がキスされたことに気付く。
慣れてなかったからか変に後ずさりしたせいで、机が床と擦れ、がた、と音を立てた。
「…………段階を飛ばしたことは謝る」
「そ、そこじゃなくないですか問題は」
「だが、こんなことで俺は避けられてたのかと、
そこで多少思うところはあるが」
こんなこと、呼ばわりに不服そうにしていたのに気付いたのか、
彼ははあ、と溜息を1つ吐いた。
「……勘違いじゃないし、嫌いにもなってないんだから、何も問題ないだろ」
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もぐもぐいちご(プロフ) - realさん» 返信遅れてしまってすみません;;realさんコメントありがとうございます!イラストも見ていただけて本当に嬉しいです…!これからも不定期ではありますが更新していきますのでよろしくお願い致します…! (2023年4月24日 2時) (レス) @page39 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - イラストの方から来ました!めっちゃきゅんきゅんしました(*´-`)作者さまのペースでの更新楽しみにしてます! (2023年4月10日 12時) (レス) @page3 id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - 朱まぐさん» 返信遅れてすみません…!男の子視点、ヒロインは好きな子なのでとにかくかわいく見えるように意識してたのでそこに言及して頂けるの本当にめちゃめちゃ嬉しいです…!コメントありがとうございます!これからも拙文ではありますが楽しんで頂けると幸いです! (2022年12月11日 12時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。男の子全員素敵です!9ページ目では佐藤君目線になってヒロイン可愛いと思ってしまいました!笑読んでて癒されました☺︎素敵な作品ありがとうございます。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2022年12月5日 22時) (レス) id: 0c936a9b54 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐいちご(プロフ) - かんずめさん» コメントありがとうございます!下でも似たようなことを書いたのですが己の生み出したキャラたちを好きと言って頂けるの、本当作者冥利に尽きます…!はちゃめちゃに嬉しいです、これからも拙い文ではありますがお付き合い頂けると幸いです…! (2022年11月16日 20時) (レス) @page22 id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もぐもぐいちご | 作成日時:2022年10月30日 17時