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主「………」
グランが蹴ったボールに応えなかった
受ける者がいないボールはコート外へ
コロコロと転がって行く
居場所をなくした私のようにも見える
グ「……行くんだね」
主「止めるなら、力付くで止めれば良い」
グ「それが出来るなら、もっと前からやってる。
君を失うなんて惜しいよ」
グランは、私を連れ戻そうとしなかった
お父様の命令が下っていないならなのか
それとも彼なりの道場があるからなのか
どちらにせよ、私を縛らなかったんだ
私が求めた自由だけは奪わなかったんだ
主「……惜しい、か」
ボールを起動し、移動の態勢に入った
お父様が私にこれを託したのはあれだ
これにはGPSが搭載されているからだ
何処に逃げても分かるように
首輪をつけた犬のように繋ぎたいだけ
自分の意のままに操れる道具にしたい
お父様は、そうとしか思っていない…
主「やはり、私はお前に惹かれていたよ。
今のサッカーは楽しいと思えたのだから」
グ「ロミア！それならッ…」
グランは何を言おうとしていたのだろう
気付けば、私は稲妻町の河川敷にいた
ずっと秘めていた想いを伝えられたから
悲しい割にはスッキリとしていた
主「(……ヒロト、お前は私が憎いだろう。
だが、それは私も同じことだ)」
裏切られたなら、それを裏切りで返す
殴られたなら殴り返すと言ったように
相手に同じことをする
それは人間の歴史と同じように繰り返
され、終わりが見えなくなって行くんだ
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作者名：美鈴愈 | 作成日時：2019年1月31日 15時
