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「なんで君がここにいるの?」




僕がそうぶっきらぼうに聞くと




『え?……うーん……意味は特にないかなぁ』




と、君はヘラッと笑って、僕の隣に腰を下ろした。




『その百点のテスト、どうするの?やっぱり飾るの?』




そんな馬鹿らしいことを聞く君はどこにも穢れがなくて。




ただ純粋な瞳をしていた。




「別に、捨てるだけじゃないの?」




飾るなんて馬鹿馬鹿しい。何故わざわざいつも見ている物を飾らなければならないのか。




『えぇもったいない……あ!ねえ、それ貸して!』




そう言われたから君に三桁の数字が書かれた紙を渡す。




君は笑顔でそれを受け取り、何かを折り始める。




カサッ、カサッと、紙のこすれる音だけがする。




それから何分か経って




『できた!』




と、いつもの、屈託のない笑顔でそう言った。




「……鶴?」




君が見せてきたものはお世辞にも綺麗とは言い難い、不格好な折り鶴だった。




『羽の部分に百点が来るように頑張ったんだよ!はい!時透くんにあげる!』




そう言って君は半場強引に僕に百点の折り鶴を渡してきた。




そして君は、お世辞にも良いとは言えない二桁の数字が書かれた紙で紙飛行機を作った。




やはり不恰好だった。




「君、不器用なんだね」




『な……!……まあ、事実だけれども!』




そして、その紙飛行機を君は飛ばした。




その時、風が吹いて、君の紙飛行機はよく飛んだ。




君は満足気に微笑んで




『それじゃ私もう帰らないとだから!時透くんも暗くなる前に帰りなよ?』




そう言って、屋上の扉に手をかける。




『あ』




君がふと何かを思い出したかのように振り返ると




『時透くんって、優しいね』




と、儚げな、どこかへ消えてしまいそうな笑顔でそう言った。




そして手をひらひらと振って扉を閉めた。




屋上には僕がただ一人いるだけ。




「……優しいの使い方、おかしいよ」




そう呟いた言葉は、誰の耳にも届くことなく、冷たい空気に溶けてしまった。

と→←ず



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梨蝶(プロフ) - 紫黒さん» はい!カゲプロ大好きですよ。透明アンサーは特に好きな曲でして……。 (2020年4月28日 16時) (レス) id: e45a2a854b (このIDを非表示/違反報告)
紫黒(プロフ) - 透明アンサー……ねぇ…………なんか見たことあんだよなーって思って先程調べたら予想通り、カゲプロの曲だった……もしかして主さんカゲプロ好きですか?? (2020年4月28日 8時) (レス) id: 3c55094d82 (このIDを非表示/違反報告)
梨蝶(プロフ) - いちピさん» ありがとうございます!傘村トータさんの曲ですよね?私も好きな曲なのですが、どう表現すればいいのか悩ましいので頑張ってみますがかけるか分かりません!ごめんなさい!ですが最前の努力は尽くしてみますのでもし作れましたら目を通して貰えたらなと思います。 (2020年3月8日 22時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
いちピ - とてもいい作品でした!!!もし宜しければ、『大切な人たちへ』というボカロ曲の作品を時透無一郎君で作って欲しいです!!! (2020年3月8日 19時) (レス) id: 43879a9f7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梨蝶 | 作成日時:2020年3月8日 12時

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