6度目の夏。 ページ6
「「……A?」」
「……ごめん、ね……今年はもう今日しか会えないのに」
そう言って、Aは手で涙を拭った。
……今しかない。
突然だけど、そう思った。
「Aの事……教えて?」
君と僕は8年も友達なんだもん。そらるさんよりつき合い長いんだよ。
だからこそ、君を全部知りたい。
Aはもう少し涙を拭った後、ゆっくりと話し始めた。
「まず、私はね……真冬達みたいに、この世に生きている人間って訳じゃない。
でも、誰にでも見えるし、幽霊とかそういうんじゃないんだ……
私は、この森の精霊なの」
「「!?」」
人間じゃない。
驚いたけれど、信じられない訳じゃない。
学校にも通ってなさそうで、毎年全く同じ容姿。
むしろ、精霊の方がしっくりくる気がする。
「もっともっと精霊はいるんだけど、普通の精霊はね、樹から出られないんだ。
私はもう要らなくなって、天から来いって命令が来た。」
そして、その時にちょうど僕が来たようで。
「それで、まだ地上に居たいってお願いしたら、10年間、8月だけ許すって言われて……」
「10年だけ、って事は……」
僕以上に喋っていないうらたさんが、何かを察した____僕も察しているけれど____ように口を開いた。
「うん。来年で終わり」
「そんな……」
高校生から僕を精神的に支えてくれていた君。
そんな君が、再来年には此処に居ないなんて……
嘘、だよね……
「ううん、嘘じゃないんだ……」
声に出ていたらしく、Aが悲しそうに言った。
辺りは、薄暗くなっている。
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作者名：夕焼 波雫 | 作成日時：2018年10月10日 6時
