幸せを噛みしめる ページ1
紫耀side
「Aー今日も食べれなそう？」
「うん...ごめんね」
「だいじょーぶ、気にしないで」
そうやって悲しそうに寝室へ戻った彼女
病に侵されてから彼女は夕飯の時間帯になると部屋に籠もって毎日泣いてることを俺は知ってる
今日もお皿に残ったご飯を片付ける
タッパーに詰めて明日もお弁当作らなきゃだと思いながら
冷蔵庫にしまう
「ごめんね、私、拒食症になったの」
そう言われたのは半年前で初めて聞いた時は、ショックというか俺が支えなきゃって思ったけど
段々とやせ細るAをみて辛くないはずがない。せめて夕ご飯だけ少しでも食べれたら
思い俺が作るようにしてみたけど効果はイマイチでAが座るはずの向かいの席の
お皿に温かい食事が残される毎日になってしまった
「はぁどうにかなんねぇかな」
シャワーを浴びて二人で選んだお気に入りのソファに寝転び今日も調べる
気がつけば俺のスマホ検索履歴には「拒食症 克服」とか
「拒食症 声がけ」なんてことばっかり並んでいた。
別に、作ったご飯を食べてくれないこととかそんな理由じゃなくて
ただ笑いあってご飯を食べていた時間が恋しい
美味しい美味しいと笑うAの笑顔が見たい
これも、俺の理想押し付けてるだけなのかもしれない
「あぁ分かんねぇわ」
静かに寝室に入ると俺だけの大切なお姫様がいる
Aの顔にはうっすら涙の跡があって、なんだかやるせない気持ちになり
半年前より何倍にも細くなった彼女を起こさないようにそっと抱きしめる
「なんにもできなくてごめんね、あの時止められなくてごめんね」
きっとこれが俺の本心なんだろう
しばらく抱きしめていると彼女の方から抱きしめてきて
俺もそれに安心したのかすぐに意識を手放した
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作者名：らむちゃ | 作成日時：2023年8月15日 21時
