久しぶり ページ15
後方車両に行くにつれ、敦くんの声が鮮明に聞こえてくる
爆弾あったのかな、てかもう一人誰なんだろう
｢間に合わない｣
ドアに手をかけた時、そんな声が聞こえてきた
見知った、大好きな声
嘘でしょ、？もう表に出ているの？嘘、嘘、嘘…！
『鏡花、！』
戦闘によって空いてしまった大きな穴
落ちるか否かのギリギリのラインに彼女は立っていた
昔と姿は変わらず、でもその表情はここからだと見えない
敦くんは彼女と対面するように真正面の離れた場所にいた
大事にはなってないようだ
｢私は鏡花。六月で35人殺した。もうこれ以上、一人だって殺したくないっ｣
そう言って落ちていった彼女
敦くんも動き出した
遠くから与謝野さんの声が聞こえる
絶望の淵に立ち、動き出せないのは私だけだった
その後も動けない私を担いで探偵社へ連れて行ってくれたのは与謝野さんだった
鏡花は眠っている
もう表に出ているとは思わなかった
だって、あれは確か……初めて貴方と会った日…
パチ
大きく綺麗な碧い瞳が開いた
昔から好きな綺麗な瞳、私とは真反対の色
『鏡花、』
泣き出しそうな私を奥へ閉まって、とびきりの笑顔を
傷一つない彼女の姿を見て、心から安心した
｢Aさん｣
ぎゅっと、ベットのシーツを握る私の手の上に鏡花の手が乗る
それは暖かくて温もりを感じた
『久しぶりだね、元気だった？』
｢うん、久しぶり…っ｣
今日の頬に一筋の涙が落ちて、シーツに染みを作った
彼女は泣いていた
我慢しているのかボロボロ泣いている訳ではないが、その表情を見て私は胸を痛めた
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作者名：はな | 作成日時：2023年9月12日 22時
