【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ8)

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漆ページ8

審神者に向かって廊下を品もなく走る。

部屋に近づく程、斬り掛かってくる刀剣達が増えていく。一人、また一人と廊下に倒れ込む。後で全振手入れ部屋行きだろう。

それにしても、斬り掛かってきた全ての刀剣が傷を負っている。手入れはされていないのだろうか。……なんて下劣な。

審神者部屋に荒々しく入ると、先程まで座っていた姉審神者が見当たらない。

「ねぇちゃんを探してんの～？アハハ、アタシの相手もしてよ！」

背後からした声は妹審神者のもの。後ろを向くと、満面の笑みで刀を握っている。……その方向から入ってきたのなら、倒れていた刀剣を見なかったのか？何も思うことは無いのだろうか？

まず、その手に握る刀は……三日月のモノでは＿＿＿？

「短剣を折るだけじゃ飽きてきたんだよねぇ、太刀にもそろそろ進出しようと思ってさ～！ね、ね、おまわりさん強いし戦ってよ！アタシ、刀を振るうことは初めてなんだよね～ッ！

“折ることは日常茶飯事”だけどー！あははっ」

「……後悔しても、知らぬぞ」

「後悔なんかしないよ？絶対勝つしー」

なかなか静まらない怒りを一呼吸で十手に込める。いつもより一層煌めいて見える十手。

いつも、己の正義に一番忠実に従うその瞬間、十手が通常よりも手に馴染む気がする。今がその時。

「せいやぁ！」

妹審神者が不馴れな手つきで刀を振るう。かすりもしない。

「おー、おまわりさんはっやーい」

「貴様が遅いだけだ」

「えっ……？」

後ろに回り込み十手を容赦なく振り下ろす。間一髪避けた妹審神者は目をパチクリさせながらこちらを見ている。

「もう一発」

「ちょ……」

彼女の体勢が崩れる。

「もう一発……」

「やめ……」

体が倒れる。

「もう、一発」

「ハンデを……」

三日月の刀が宙を舞う。

「＿＿＿覚悟せよ」

「うっ……！？」

……ピタリ。

「……？」

彼女の顔スレスレで十手が止まる。

「無用な殺生はせぬ」

十手を握ったまま静かに立ち上がり、審神者部屋を立ち去る。

「……あはは、慈悲深いおまわりさーん。アンタみたいな奴嫌いなんだよね、

死んで」

三日月を再び掴んだ妹審神者が背後から斬りかかる。

狂喜じみた笑顔で。

『バキッ』

「い……

いだぁあぁぁああああッッ！！！」

「生憎、仏の顔は三つも持ち合わせていなくてな。許せよ」

顔は笑ったものの、どうしても獲物を仕留める目が変わらない。

仕方あるまい。