【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ48)

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肆拾漆ページ48

黒沢side

｢新川……｣

普段から任務を共に行うことが滅多にない為、戦っているその姿をこうやって見たことがあるのは数える程しかない。

そして今の新川は、その数える内のどの姿より迫力があった。何より、放っている殺気が普通ではない。

ちら、と課長の顔を覗いてみる。

｢……｣

難しい、厳しい顔で新川を見守っていた。何か複雑なことを考えているのだろう。

新川はこの課に入ってくる前、何処に居たのか。何をしていたのか。詳しいことはわからない。頼りは風の噂のみなのだが、それも正確性があるわけではない。

彼女は今、何を思って戦っているのだろう。

いつか知ることは出来るだろうか。アイツが抱えているであろう苦痛を取り除いてやれるだろうか。

俺なら……いや、アイツの刀剣達ならきっと大丈夫だろう。

俺はアイツの先輩として、支えてやるだけだ。

そんなことを考えていた俺を余所に、最後の敵を新川が標的にした。本人は最後だと気がついていないらしい。それ程集中していたのだろう。

｢やめて……｣

俺が抱えていた加州が、小さく、本当に小さくそう呟いた。

大きく振りかぶったはずの新川の腕が、敵ギリギリでピタッと止まる。

あの集中の中で＿＿聞こえたのか？

｢！新川！！｣

静止した新川を、ここぞとばかりに敵が斬りかかろうとしていた。

それを伝える為に声を上げたが、何を思っていたのか、新川は少し反応が遅れた。

声は出ても体はすぐには反応しない。託された加州を放り出すわけにもいかない。

斬られそうになっている新川を傍観することしか出来ないのか。

くそ、どうすればいいんだ。

瞬間、キィンと刀の音。

物陰から出てきた小柄な誰かがそこにいた。

そいつは……

｢＿＿五虎退｣

ぽつり、と新川がその名を呟いた。

そう。そこにいたのは新川の刀である五虎退。新川が俺達の課に入ってくる前から、その隣にいた刀剣だ。

｢遅れてしまいました、すみません＿＿主様！｣

五虎退は敵の刀をぐっと振り払うと、その隙をついて新川に何か耳打をした。

ハッと、何かに気づいたらしい新川は敵の背後に回り込む。そして今度は冷静に、小さく腕を振るった。

『ビリビリィッ！』

と派手な音が発ったと思えば、今度は敵の瘴気のようなものが一清されたように見えた。

敵は白光をその身から発すると、光の中で形を変える。

光が退いて残った人影は、加州と同じ沖田総司の刀の、大和守安定だった。