【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ46)

今日:20 hit、昨日:0 hit、合計:95,029 hit

肆拾伍ページ46

拙者を呼ぶ声に向かって近づくと、ある壁の前にたどり着いた。どうやらこの向こうに黒沢殿達が居るらしい。

壁に触ってみる。適当に塗られた塗装がボロボロと剥がれてくる。これなら安易に壊せるだろう。

より多くの敵を呼び寄せてしまうかもしれないが、今は本当に選ぶ余地がない。

自らの体をボロ壁から離し、加州を守る様に壁と反対に向けて抱える。少しだけ距離を離した敵がすぐそこまで迫っていた。

そして、加州に壁の瓦礫が被らないように背を丸くして、そのまま壁に全力で体当たりした。

『ぐしゃぁっ！ガラガラ…』

派手な音をたてて壁が壊れる。壁の瓦礫や塗装がバラバラと背中や頭に降り注ぐ。幸い頭には布を被っているし、少し厚めの着物を着ている為痛みはあまり無い。

自分の姿はいざ知らず、腕の中の加州の姿を確認した。服の裾が少し破れてしまっているが、簡単に直せそうだ。顔はというと、瓦礫などで傷が出来ないか心配していたのだが、どうやら全くの無傷。

胸をホッと撫で下ろすと、壁の向こうであるこちら側を見回す。

というか、もう見回す以前に咳き込む声が聞こえていた。

｢ゲホッ、ケホッ！！｣

｢くそ、新川のやついつも派手にやりすぎなんだよなぁ、よくやったよ！｣

｢目が、目がぁ！！おい黒沢ぁ、お前後輩にどんな教育してんだ！おかけで口に巻かれてたアレ吹き飛んだじゃねぇか！褒めてつかわす！｣

｢それ褒めてるんですか課長！？｣

いや、咳き込むどころか思い思いに言葉を飛ばしていた。後ろから敵が迫っているというのに、やはりこの人たちはマイペースというか大物だというか。

｢新川！手と足の縄を外してくれ！｣

黒沢殿が一際大きな声で叫んだ。もしかしたら後ろからの敵の接近に気がついたのかもしれない。

｢了解した｣

皆の腕と足には麻縄が強く巻かれており、どうやらそれのせいで動けなかったらしい。

麻縄、とこの前のこともあり既視感を感じて少し動揺したが、それとこれとは関係ないと一番近くにいた者の麻縄を少々乱暴に解く。硬い。

いでで、と声を上げながらも自由になった上司が次の者の縄を外す。

｢！新川後ろ！！｣

黒沢殿がまた叫ぶ。後ろを振り返ると、壁の瓦礫の上から大きく刀を振りかぶった敵が此方に向かって刀を降り下ろそうとしていた。

それを見て、すかさず十手で刀を受け止め敵を睨んだ。

｢貴様、今……

加州を狙ったな？｣

何故か拙者の中で、何かが切れた音がした。