【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ43)

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肆拾弐ページ43

｢そういやァ、二日位前に開催側のスタッフが慌ただしくしながら裏方を入ったり出たりしてたなァ｣

｢真か。ご協力感謝する｣

｢どういたしまして。まァ、そろそろ闇市の情報収集も飽きてたし丁度い……｣

｢？｣

｢……いやァ。何でもない｣

そう言って男はまた先程のように拙者の耳元に近づくと、限りなく小さな声で囁く。

そしてぐっと距離を離すと、

｢ウチは値切り交渉にゃ応じねぇよ。冷やかしは帰った帰った！｣

周りの店にも聞こえるような大声でそう言った。周りの様子を一瞥してみると、先程まで怪しむように此方を見ていた周りの奴等は納得したように最初の状態に戻っていた。

近い距離で話していたのは、あの客が必死に値切り交渉していたから。

そういう解釈をさせるためか。

男に背を向け、何事も無かったように通りに戻る。

『まぁ上手くやれや』

また会いそうな気がする男の言葉を思い出し、裏方に向かった。

わかりにくい入口から入った裏方は思った通り暗く、埃っぽい。うっすらとしか見えない視界の中で歩こうとすると、足の爪先に何かが当たった。

音をたてないようにそれを拾い上げる。傷つけないように埃を払うと、傷の付いた刀身が見えた。付いている汚れを服の裾で拭う。傷が付いているとは言え、まるで神が宿っているかのように美しい。

…“神が宿っているかのように”？

ハッとして刀の全体を見る。この刀は……

｢……加州清光｣

この刀は決してあの“加州清光”ではない。

それを頭ではわかっているのだが、どうしてもあの時の思い出が甦り苦痛を感じる。

取り合えず、刀があるならば鞘もあるはず。黒沢殿達を探すのと兼ねて探すことにしよう。

その行動がただの自己満足で、罪滅ぼしになんて到底ならないことは知っている。こんなことをしてもあの加州は満足しないし、拙者は許されないし、あの事実は消えない。

でもそうしないと拙者の気がすまないのだ。

加州を落とさないように掴むと、手に持ったまま歩き出す。辺りを見回しながらゆっくり歩く。見つかるのも時間の問題だろう。

埃っぽい空間の中で咳き込みながら歩いていると、狭い通路の端に赤い色が見えた。