【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ38)

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参拾漆ページ38

怪我が治りかけていること、そして長く眠っていた様な感覚を覚えていたことから察してはいたのだが、どうやらあの日から日が少し経ってしまっているらしい。

五虎退いわく、家には誰も来ていないという。だとすれば署では恐らく、拙者は行方不明か死亡あたりの扱いをされているのだろう。仮に例の三日月のいた本丸に赴いたとする。あの沢山の警察や政府の者の欠片の中に拙者が混じっていると思われても、おかしくはない。

だからといって、拙者は既に何かしらの理由があって帰還しているのではないか、という考えに至らないというのもいささか不可解である。

もしや、確認出来ないくらいの理由が生じているのか？

そのようなことはあり得ないハズだが＿＿＿

｢主？どうしたのさぁ？｣

白昼堂々、祝い酒と称して早速酒の栓を開けた次郎が絡んできた。ほろ酔い気味なのか頬が少し赤く染まっている。

｢いや……嗚呼、やはり今からでも署に…｣

｢なーに言ってんのさ！病み上がりってヤツなんだから主は今日は一日休んでろ、ってさっき石切丸に散々言われてたじゃないか！｣

｢だが……自らの為に仕事を休むなど言語道断…もし今苦しんでる者が、拙者が救える者が何百何千と居たとしたら……やはり行かねばならな｣

｢それよりも、今日くらいアタシの相手をしとくれよ！ホラホラ、飲んだ飲んだー！｣

｢だから飲まぬと言ってﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ｣

次郎が無理矢理酒の瓶を拙者の口に当ててきた。案外瓶は大きく持ち上げるにはかなり重そうだが、流石大太刀とでも言おうか、がっしり掴んだ腕は見事に固定されていて……

と、そんなことを悠長に説明している場合ではない。

｢ゲホッゲホッ、じ、次郎！！｣

｢だってこうしないとアンタ休まないでしょ｣

かなり飲んでしまったのか、瓶の中身は半分以上減ってしまっている。その瓶の口元をチロチロと愉快そうに舐める次郎を、あまり叱る気にはなれなかった。

｢いつも仕事人間なんだから、今日くらい休みなよ｣

｢……じ、ろう｣

｢あー、酔いが回ってきたかな？相変わらず弱いなぁ、主は！｣

ほーら、と膝の上に乗せられる。最後の抵抗で次郎から逃れようと体を動かすが、先程の瓶と同じようにがっしり捕まれビクともしない。

ネジ曲がっていた、ぐらんぐらんに揺れていた視界がいよいよ暗転してきた。

｢はいはい、おやすみ｣

酒臭いくせに、と内で悪態をつきながらも甘えている自分は、いつの間にか眠りについていた。