【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ36)

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参拾伍ページ36

｢考えると言っても、やはりそう簡単には思いつかんな｣

いや、思いついてしまったら、それはそれで問題があるような気がするが。昔から共に居た拙者の誇りである彼の名前を、簡素なものにはしたくない。

｢時間を頂けないだろうか｣

｢勿論、構わない。楽しみにしていよう｣

心底嬉しそうに頷くその姿に釣られ、拙者も口元が緩んだ。

｢……ん…｣

｢｢！｣｣

三日月がゆっくりと目を開ける。それに気付き拙者達は三日月の顔を覗く。

｢三日月……｣

｢……

朝餉の時間か？｣

寝ぼけているのか、朗らかに笑いながらの朝食発言に盛大にずっこける。彼も呆れたように苦笑いを浮かべている。

｢はっはっは。冗談だ。……おはよう、A｣

悪戯っ子のような顔でそう言うと、拙者の背中に両腕を回し自分の胸の中に引き入れた。

｢！？｣

｢なっ……！｣

まさかまだ呪いが解けていないのか？そんな馬鹿な。

そう思ったが、この前のような禍禍しい殺気は感じられない。どうやら呪いが解けていないわけではないらしい。では何故だ？彼も動揺を隠しきれない様子で腰の刀の柄に手を伸ばす。

｢は、離せ｣

｢ああ、悪いな｣

焦りながら頼むと断られることもなく、あっさり解放された。

いきなり何を仕出かすかわからない奴だな、と思いながら額の汗を拭った。

そういえば、と本題を切り出す。

｢起きたばかりのところ申し訳ないが、少し聞かせてはくれぬか？｣

｢何だ？｣

｢何故、お主は“あんなこと”になっていたのだ｣

｢……そうだな。いや、事の発端は主の不注意からだったのだが＿＿＿｣

それから三日月は、まるで物語を音読するかのように話始めた。まるで自分はあまり関わっていないような、しかしながら胸を痛めている様子で。

ある戦闘で初期刀であり近侍である歌仙兼定が中傷の傷を負い、主の誤った判断で軍を進めた結果破壊されてしまったこと。

その主は心に大きな傷を負い、審神者専用の部屋に引きこもったこと。

やっと部屋から出てきたと思ったら、見知らぬ男を本丸に招き入れたこと。

そしてその男に、『歌仙兼定を元通りにする代わりに、この札を一番練度の高い刀剣に使え』と言われたこと。

歌仙がいなくなった本丸の中、一番練度が高い刀剣が自分だったこと。

主の為ならばと札を使ったが、強烈な衝動に駆られ2日程しか抑えられなかったこと。

札を使った自分よりも、今か今かと歌仙の帰りを待つ主を見て衝動が抑えられなくなり殺めたこと。