【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ30)

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弐拾玖ページ30

「……まさか」

自らの腰を見てみると、肌身離さず持っている刀はそこには無かった。代わりに白黒の彼の手に握られている。

……彼は、拙者の刀？

男性はグッと三日月の刀を振り払うと、三日月の目の前に一振りして後退させた。

「主。怪我は無いか」

その隙にこちらに目を向け、拙者を縛っていた縄を斬る。あれだけ固く結ばれていた縄が、スルスルと床に落ちていく。

「ああ、助かっ……いっ」

立ち上がろうと左足に力を入れるが、怪我をしたところが痛んで走れそうにない。

「無理をするでない」

「なんの、これしき……」

「……抜かっていたな。まさか刀剣を所持していたとは」

怒りに満ち満ちた顔でこちらに刀を向ける三日月が、聞いたことのないような低い声を出した。穏やかでマイペースな、通常の三日月とは程遠い。

「どうする、主」

「……奴の中の呪いを取り除く。拙者が見るからに、あれは御札によるものだろうが……

っ、後ろだ！！」

三日月が彼の背後を狙って刀を振るう。防ごうと十手を取り出し受け止めるが、左足に負担がかかってジンと痛む。

「主！！」

ハッと気がついた彼は三日月に向かって刀を振るった。華麗に避けた三日月は、確実に彼の本体を狙って破壊を試みている。

彼が押され気味だ。このままではよくない。

どうする？どうすればいい？

三日月と彼が刀を交え交戦する中、自分の頭を最大限に使って考えた。

呪いは御札によるものだろう。ならば、呪いを空の御札に拙者の霊力で上から閉じ込めてしまうのが一般的かもしれない。だが、現世にあの三日月を連れていくと怪我人が出てしまうだろう。かといって、この本丸から御札を探していると彼の身が危ない。

ならば＿＿＿

「……お主は、拙者の家まで帰り方を知っておるな？」

「無論主と行動を共にしてきた者として、その程度のことは」

「余所見とはいい度胸だな」

「くっ……！」

疲労が溜まってきているのが手に取るようにわかる。なら、早くその苦から解放させなければ。

三日月からも。

「今、楽にしてやる」

両手を三日月の前に出して、三日月の霊力と拙者の霊力を繋げる。

「ッ！？」

「主、何を……」

三日月の霊力から＿＿＿

「呪いを吸い取るだけだ」