【刀剣乱舞】新米時の警官。壱。 (ページ29)

今日:14 hit、昨日:0 hit、合計:95,023 hit

弐拾捌ページ29

「人は壊れてしまったらもう戻らないからな。まぁそれは俺も同じだが……」

顎を掴んだ手は動かさないまま、もう片方の手で腰を撫でる。

「だが、問題ない。お前は見ていないか？

審神者の周りには、“他”も居ただろう」

「…！！」

彼女だったものの周りには、確かに他のモノも落ちていた。

もっと酷い形で。

「そうだ……あの部屋にはこの本丸に来た政府や警察の者たちがいる。いや、もうただの肉片に過ぎないか……」

ようやく自分が命の危険に晒されていることに気がついて、目を見開く。

「ここに迎えた誰も気に入らなかった……ただ、あの表情や声にだけは興奮した。ゾクゾクした」

アレが全て警察や政府の者＿＿＿？

「だが、今日は違う」

三日月は拙者にグッと顔を近づける。

「その目。態度。容姿。名前。全て愛らしい」

「……っ」

「安心しろ、お前はここで一生＿＿＿

「断る…」

…なん、と？」

心の奥の恐怖を無理矢理押し込め、控えめな声で抵抗した。

「……いや。ここから出ることは許さないぞ…？」

声を震わせながら手の力を強める三日月。

怒っているのか悲しんでいるのか、よくわからない表情だ。

不意に左股に痛みが走った。

「い"っ！？」

見てみると三日月が笑顔で自分の本体を浅めに突き刺していた。

拙者の鮮血が流れていく。

「いい声だ……いい、もっと聞かせてくれ…」

「い、っ……！？」

ぐりぐりと傷を抉られていく。

「っ……あ"ぁっが、ぐぅっいぃ……！！」

小さな怪我が少しずつ大きくなっていく度に、押さえている声が漏れる。

「……ああ、そうだな。こんな地道なことをしないでも、一緒に逝けばいいのだったな」

「！？」

その身である刀をゆっくりと離すと、三日月は大きく構えた。

「大丈夫だ、俺もすぐに逝こう」

もしや本当に、ここまで、なのか＿＿＿？

悔しくて悔しくて心残りしか無くて。

三日月の目の奥の“呪”にやっと気づけたけれど、

ギュッと目を瞑ったとき。

　

　

目の前が一瞬光り、少し遅れて刃と刃がぶつかる音がした。

ゆっくりと目を開ける。

そこには、

「主へのこれ以上愚行は、この私が許さん」

白と黒の懐かしいような男性の姿があった。