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もうすでに、私の一番はめいちゃんなのに。
「も、待てない、の。だめ?」
お風呂も夜ご飯の片付けも明日の用意も何もせず、このまま彼のペースに飲まれると明日の朝に後悔するのは分かってる。
でも、唇を噛んで呼吸をつっかえさせる彼を、無視するなんて出来なくて。
「Aさん、? ねぇ、Aさん、すきだよ」
「ん、めいちゃん、おいで」
分かりやすく誘ってくる彼に許可をだす。
体をピクっと震わせ、待てから開放された犬のように本能的に首に唇を這わせた。
気がつけば胸元の締めつけもなくなって、
「めいちゃん」
「ん」
「好きにしていいよ」
「っ、そんなこと言われたら、おれ、」
「ちゃんと待てできたいい子には、ご褒美あげなきゃ」
ね?と振り返り彼の顔を見つめると、なにかスイッチが入ったように瞳の色が変わる。
少しの遠慮さえも捨てて手を進め、性急なキスを求めた彼の唇に人差し指を置く。
「ん、なに」
「あのね、ちゅーだけは、優しいのがいい、」
「っ、はい、」
私からのひとつのわがまま。
彼の荒くなった呼吸を落ち着けるように紅い頬を撫で、私からゆっくりと口付けると、随分と熱い舌がはいってくる。
その熱はアルコールのせいか、私のせいか。
「っん、ほんとに、しらないよ」
私から目を逸らすことなく押し倒し、両腕を片手でまとめて拘束される。
いつもは純粋で従順な彼に、追従させられる瞬間が密かにすきだった。
してやったり顔な彼が可愛くてしょうがない。
「Aさん、おれのいうこときける?」
「なぁに」
「おれがいいよって言うまでイっちゃだめ、です」
「そんなの、」
「きけないの?」
加減すら分からない今の彼と、快感に弱い私にできるわけが無いのは最初からわかりきっている。
それなのに、耳元でちゅう、ちゅっと甘い音が聞こえ思考が緩くなった私は、簡単に頷いた。
「ふ、Aさん、おりこうさんです」
「いじめる気しかないじゃん〜、、」
「いじめられるのすきじゃん」
「ちがう」
「ちがうくないです」
未だふわふわとしてる彼に口だけの否定をしてみたけど、そこの判断は出来るみたい。
ほんの少しだけ残っていたらしい缶を取った彼は、一口含んだまま親指で私の唇をなぞる。
そのまま下唇を押して口を開けられると、生温い液体がとくとく、と注がれる。
「このまま好き勝手してあげるから、俺の事しか考えないで」
濡れた唇同士はアルコールに溶けて、身体までもが混ざり合った強欲な夜。
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むい(プロフ) - 哀さん» そこまで言って頂けるなんて、とても嬉しいです。ありがとうございます!これからも情緒を揺さぶれるよう頑張ります🙏笑 (2022年8月1日 23時) (レス) id: 9ac3b928f1 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - こんばんは、夜分に失礼致します。めっちゃ甘々なお話かと思ったら急に切ないお話出てきて情緒がおかしくなことになりました…大好きです。この世に生まれてきて下さりありがとうございます。 (2022年7月31日 23時) (レス) @page26 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
むい(プロフ) - さくらわらびもち。さん» こちらこそ、ももいくん好きで見てます!いつも見てる方から褒めていただけて嬉しいですありがとうございます😭 (2021年12月17日 1時) (レス) id: d804486ec2 (このIDを非表示/違反報告)
さくらわらびもち。(プロフ) - nrsさんの方も拝読させて頂いています、本当に作者様の文章が大好きです……!これからも楽しみにしています、いつも素敵な文章をありがとうございます;; (2021年12月17日 0時) (レス) @page14 id: 77b5208614 (このIDを非表示/違反報告)
むい(プロフ) - かくさん» こだわっている部分なのでとても嬉しいです、ありがとうございます! 更新頑張ります😌 (2021年12月3日 2時) (レス) id: d804486ec2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むい | 作成日時:2021年11月11日 19時