どちらも ページ21
切れ長な目が、さらに細められて。
目の前には度数の高めな空き缶が並び、次の缶を開けることでさえ覚束無くなった彼は諦めて私の手を取り桃色基調のネイルを撫でた。
「あ、また、ネイル変えたんですね」
「そうなの、いいでしょ」
「かわいい、おれの、いろ」
わかりやすく左の薬指だけに塗られたオレンジを見つめて、少し考える素振りをしてからへらっと笑う。
「Aさん、」
「なあに」
「ここだけ、おれんじなんだ」
いつもは読めない表情を浮かべることが多い彼が、嬉しそうにその指を撫でる。
指の付け根から爪先にかけて、確認するかように何度も何度も。
「ちゃんと、全部同じ色塗れるように、しなきゃね」
「ん〜?」
「だから、俺のAさんにできたら、ここにはめてあげるから。もう少しまっててくださ、ぁい」
あぁ、そういうこと。
酔った時にこんなこと言うなんてずるいなぁ、こっちはシラフだっていうのに。
予約しちゃった、なんて顔を赤くして甘えてくるから何となく頭を撫でてみると、笑い声を漏らす。
「んふ、Aさんなんで困り眉なの?かわいい」
「、めいちゃん、お水飲も?」
「むりっすよ、のめない」
「持ってくるから、ね」
キッチンに向かいたかったのに、立つことさえも阻止された。
あんなにもふにゃふにゃとしてたのに、お腹にがっしりと回った腕はそう簡単に離れなくて。
「つかまえちゃった、いいにおい」
「ちょ、と、離せる?」
「離したらどっかいっちゃうじゃん、だめだよ」
私の肩に火照った顔を置いて、横から覗き込んでくる彼。
視線が当てられた場所が、顔が、体が、熱を含んでいく。
「お水のんだら、酔いさめちゃうでしょ」
「でも」
「まだいーの!」
段々と距離が近くなっていってる事に、気づいていないのだろうか。
もうすぐ首にひっつきそうな唇は、息が荒く心配になるほど。
「め、ちゃん、」
「なあに」
「しんどそうだから、早く寝よ?明日に響いちゃう」
「、ねぇ、おれ、めんどい?」
「え、?っと」
「そんな、さぁ、寂しくなるようなことばっかり、っめいちゃん、きらい?」
さっきまで悪戯な目で見つめてきてたのに、いつの間にか○んだ瞳があちらこちらに泳いでいる。
そんなつもりはなくて、むしろ可愛くて愛おしいなんて思っていたのに、伝え方が悪かったのか。
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むい(プロフ) - 哀さん» そこまで言って頂けるなんて、とても嬉しいです。ありがとうございます!これからも情緒を揺さぶれるよう頑張ります🙏笑 (2022年8月1日 23時) (レス) id: 9ac3b928f1 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - こんばんは、夜分に失礼致します。めっちゃ甘々なお話かと思ったら急に切ないお話出てきて情緒がおかしくなことになりました…大好きです。この世に生まれてきて下さりありがとうございます。 (2022年7月31日 23時) (レス) @page26 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
むい(プロフ) - さくらわらびもち。さん» こちらこそ、ももいくん好きで見てます!いつも見てる方から褒めていただけて嬉しいですありがとうございます😭 (2021年12月17日 1時) (レス) id: d804486ec2 (このIDを非表示/違反報告)
さくらわらびもち。(プロフ) - nrsさんの方も拝読させて頂いています、本当に作者様の文章が大好きです……!これからも楽しみにしています、いつも素敵な文章をありがとうございます;; (2021年12月17日 0時) (レス) @page14 id: 77b5208614 (このIDを非表示/違反報告)
むい(プロフ) - かくさん» こだわっている部分なのでとても嬉しいです、ありがとうございます! 更新頑張ります😌 (2021年12月3日 2時) (レス) id: d804486ec2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むい | 作成日時:2021年11月11日 19時