めいちゃんといろいろ。

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彼が一瞬見せる優しさはこの先の恐怖を予兆しているかのようで、酷く怖い。


「Aちゃんは、俺の言うことだけ聞いてればいいの、簡単でしょ？」
「は、ぃ」
「俺の犬なんだから、ね」
「めいちゃんだけ、です」


私が少し苦手で、でも大好きなこの声。
ころころと変わる声色の中で、ぼーっとした顔で出すこの低くかすれた声は脳まで侵食される感覚がして止まない。


「俺のこと好きだもんね」
「めいちゃんがすき、」
「じゃあもっと俺に好きになってもらわなきゃね」
「っう、は、い」


めいちゃんの手が鎖をするすると近づけて段々首元に近づいてくる。
時々ぐっと引かれて顔が歪む私を見ては口角を上げる。


「苦しい？」
「ぁﾞ、ぐ、」
「Aちゃんがダメな子だからだよ、ねぇ」


一発で頸動脈を確実に押さえてくる彼はもう手馴れたものなのだろう。
段々と頭の中にもドクドクという音が響いて、全身の力が抜けてくる。


「俺の言いなりでここいるんだから、体調崩したぐらいで迷惑かけてこないで」
「ご、め、ぁ、」
「あと、ごめんなさいしたあとは、ちゃんと俺のご機嫌取りしなきゃ」
「、っは、ぅ」
「もっと俺の事勉強して？いつも見てるでしょ」


かなり気分屋で飽き性の彼のことなんて、いくら見ても理解できない。


「そんなことばっかしてると、捨てられちゃうかも」
「っや、です」
「うーんやだねぇ、じゃあもっと頑張らなきゃ、」


やっと首から手を離され、咳き込んでいる私を見て満足気な表情を見せる。
そんな狂気的な笑顔が、彼にはとても似合っていた。


「Aちゃんみたいなの捨てんのもったいないから、これからも俺とずっと一緒にいるんだよ」
「、いっしょ」
「そう、だってこんだけ酷いことされても一緒にいたいんでしょ？ 可哀想に」


鋭い目線で見つめられ思わず呼吸を止めてしまうと、さっきのお仕置のせいでまだ酸素が足りておらず、ふらっと地面に背中を打ち付ける。


「あーあ、力入んない？」
「めいちゃ、っぁ、ごめんなさ、」
「、また起きたらいっぱい虐めてあげる、ね」


起きても苦痛が待っているというのに、不思議と絶望は感じない。 むしろ、興味が湧いて来てしまうのは私も彼のように壊れてしまっているのか。


「何されるんだろうねぇ、怖いねぇ、笑」


隠す気のない嗜虐心に全身が疼く。

そんな彼を好んでしまった私は、彼が言う通り可哀想な人間だ。

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