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Le passé de Kei
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診察についていくと、松本先生が椅子を用意してくれて。
大ちゃんが来るまで少し話していた。
「伊野尾慧っていうんだ。いい名前じゃん。」
「あ、どうも…」
「そんな緊張しないで大丈夫だよ。俺は伊野尾が悲しむようなことはしない。」
「でも、怖いんです。」
「そっかぁ〜」
「俺、ずっと一人だったんです。大学で会った人にも成績が理由で陰口叩かれてて。もう嫌だなって。だって信用してた友達が言うんですよ？だから一人で仕事もしようと思ってたけど、結果これですよね、本当何やってんだろ。」
「いや伊野尾はよく頑張ってたよ。」
「結局、松本先生にも迷惑かけてるのは事実です。」
「それが分かってても、お前はまた一人で仕事をしようとしてる。」
「…何が言いたいんですか。」
先輩にこんなふうに突っかかったのは初めて。
でも、薮先生は嫌な顔なんてしないで教えてくれた。
「一人では、もうどうしようもできないってこと。」
「…ぇ？」
「誰かに頼って生きていかないと、また体を壊す。しかもこれ見る限り大貴くん結構自傷してるっぽいじゃん。もしもこのまま自傷がエスカレートして緊急搬送されたら？お前は大貴くんを救うときに誰かを頼らなきゃいけない。」
「それは、」
「できないだろ？伊野尾は精神科医だ。」
「できません。でも、頼り方も分かりません。」
少しだけ、松本先生に丸め込まれてる感はある。
だけど、このまま人を頼らないで生きるのは無理だって思ったのも事実。
「俺、松本先生のこと、頼りたいです。でも、本当に分からないんです。」
「じゃあさ、よくわかんない仕事とか自分じゃこなしきれない仕事があったら俺のとこ来て？」
「いやそれって…」
「迷惑じゃないから！！」
「……やってみます。」
俺の言葉に納得したのか、松本先生はニコニコしながら「そろそろ大貴くん来るかなぁ」と呟いていた。
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作者名：きゃらめるらて | 作成日時：2020年9月21日 22時
