選んだのは…水色 ページ44
長い針が頂点を指す。
何時もの、何時も通りの時間。
窓の外をちらりと見てため息をついた。くるりと振り向くと目の前に、みずいろが、まぁるい。みずいろ。きれいな。
「お前の恋人の名前は？」
ぼぅっとした頭の中にすっと入ってくる。低い声。すごくここちいい。ふわふわする。もっとききたい。もっと。このひとがいないと。もっと。みずいろ、と、きんいろ。きらきら。
このこえ、は。
『こ、ね…し…ま…？』
「…んー。やっぱちゃうな」
パァンと破裂するような音がして、目の前がだんだんハッキリしてくる。
手を合わせたコネシマが立っていた。おそらく、彼がねこだましの要領で自らかけた洗脳を解いたのだろう。
『…何でわざわざ解いたのさ』
「いや…目ぇぼんやりしとるし、やっぱこれはAの意志ではないな。って思ったから。」
ここまで来て私の意志を尊重するくらいには、この男は意外と紳士なのだ。
私の顎を両手で包み、コネシマと目を合わせられる。
「A、洗脳使って無理やりには言わせんよ。…お前が良ければ、俺と生きてくれへんか？」
綺麗で、少し寂しげな水色が真っすぐにこちらを見てくる。
『…私でいいの？』
「お前がええんや。お前と、一緒に生きていきたいんや。…俺は家族なんてよぉ分からん。愛だの恋だのも分からん！けど…一緒に生きてみてくれへんか？」
ぺそ。と下がる耳と尻尾の幻覚を振り払い
応える。
『もういらないってくらい愛してあげる。愛ってすっごく重いんだよ。耐えられる？』
「おう！俺も俺なりにたっくさん気持ちを伝えたるからな！重すぎて潰れるんちゃうぞ！」
『それなら、倒れるときは共倒れだ。』
「Aと一緒に死ねるなら悪ないな」
ぎゅっと抱きしめられるのが少しこそばゆい。
愛なんて知らなくても、私達は自力でこの結論に辿り着いたのかもしれない。
これが、私達の最適解の形
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
