選んだのは…赤 ページ42
いつもの予告時間近く。
インターホンが急に鳴らされた。
モニター画面から応答する。
『はい。萬屋ですが…』
「夜分にすみません。隣の高橋です」
『あら、高橋さんこんばんは！ご依頼ですか？』
玄関前にいたのは隣の家の旦那さん
「はい、息子が宿題で分からない部分があるって言い出して…」
『はいはい。かしこまりましたー。今そちらに向かいますので少々お待ち下さーい』
玄関へ歩き、扉を開けると高橋さんが立っていた。
「こんな遅くに申し訳ないです…明日提出の課題だって駄々をこねられてしまって…」
『あはは。彼らしいですね。ところで……
高橋さんは、私より背が高いんですよ。と、言ってもほぼ同じくらいの背丈なんです』
目の前に立っているのは私より10センチは背が高い男の人
『ツメが甘いよぉ。トントン』
「…しゃーないやん。こうしないと衣装はいらなかってん」
目の前の彼は首元からガワを掴んでビリっと破いた。
「はー窮屈やった」
衣装が一瞬で代わり、目の前には何時もの怪盗服を着たトントン。
『流石、インターホン越しじゃ分からなかったよ』
「身長はどうにもできへんからなぁ…
ま、とりあえず一緒に来てもらおか？」
『どこまで？』
「せやなぁ…墓場まで…とか流石に重いか？」
『全然。むしろその先も一緒がいいんだけど』
「…ほんまに？」
『うん。恥ずかしいかもしんないけどさ、言ってほしいな』
「…あいしてる。誰にも渡したく無かった。俺を選んでくれてありがとぉ」
豚の面を外し、顔を真っ赤にした彼が小さくつぶやいた
『…言われた側だけど凄い恥ずかしいかも』
「こーゆーの俺にはむいてへんって！…ほら、帰ろ」
『うん！』
そのまま少し高い体温の手を繋ぎながらゆっくりとトントンの家へ向かった。
穏やかで、随分と静かな夜だった。
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
