最後の予告状 ページ41
「ばか、ばか、なんで言わなかってん」
シャオロンが鼻をすすりながら抱き締める力を強めてくる。
『ごめん』
「そんなんじゃ人間誰しも心壊れてまう。もっと吐き出して頼ってや…心の病気は簡単に治せへんねんぞ…」
鬱が肩に頭を擦り寄せてぽろぽろと涙をこぼした。
「もうここ痛ない？」
ゾムが私の下腹部を撫でて心配そうな顔をする。
『うん、傷も残らなかった』
「そか」
「空にも届くといいですね。Aさんがこの世を楽しくするために頑張ってるって。…そんなお祖母様ならお会いしてみたかったものです。」
『エミさん連れてったら喜んだだろうね。ばぁちゃん、賢い人好きだったから』
「俺も軽く警備をハッキングできるくらいには賢いっすよ」
『目ぇ真っ赤にして言われてもねぇ。泣かないで〜ショッピくん〜』
「…」
コネシマが無言で抱きつく力を強める。顔は見えないが嗅ぎ慣れた煙草の匂いがした。
「話してくれてありがとぉな。頑張ってきたんやな。もう1人やないで」
『ん。ありがとうねロボロ』
「…もう1人で抱え込むなや。何があろうとAのことを嫌いになるやつはおらんよ。…さ、皆べしょべしょになってもうたし帰ろか」
『そうだねトントン。……受け入れてくれてありがとう。皆』
遠くからサイレンの音がする。
ぺそぺそと泣く皆を引き連れて家に戻る。
『今日はうちで雑魚寝しようか』
「する！」「酒買って帰ろうや」「梅酒でええか？」「ツマミ作ってくださいAさ〜ん」「エミさんどこ行くねん！」「あれ？こっちじゃ無かったか」「ゾム！ちゃんとはぐれんように見とけ！」「んふふ。楽しいなぁ。A？」
『うん。楽しいし、ちゃんと幸せだよ』
次の日の朝。新聞に踊った文字を見て、私達は歓声をあげることになる。
［お手柄？！我々怪盗団の活動により娯楽禁止条例完全撤廃へ！］
『…っ！〜〜〜いやったぁ！！！』
「ついにやったったな！」
シャオロンとハイタッチをして喜ぶ。
「…ついに俺等もお役御免かぁ」
トントンが少しつまらなそうに言う。
「そうですね、少し寂しいものです」
「いーや。まだ盗んでないものが残っとるやろ？」
ゾムがニヤリと笑い、こちらに目線を向ける
手渡されたのは1枚の紙
【今宵、貴女を攫いに参ります。我々怪盗団】
「誰を選ぶか。お日さん出てる間にしっかり考えてな？」
不敵に笑った彼らの背中を、呆然としながら眺めることしかできなかった。
今日の夜は、長くなりそうだ
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
