君に愛の衝撃を！【d!】 (ページ40)

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つまらない昔話をページ40

昔、私は男尊女卑の家系に産まれた一人娘だった

「いいか。お前は男だ。この家に恥じぬ男になれ。分かったな」

『はい、父さん』

「ごめんね…男に産んでやれなくて…」

『何言ってるのさ母さん。俺は男だよ』

抑圧した。その性(さが)を。

「おい！お前も一緒に遊ぼうぜ！」

『ごめん、テストの勉強があるから』

「アイツ付き合い悪いよな」「ほっとこうぜ」

「またテストで満点か！その調子だ！」

『うん』

我慢した。その心情(ホンネ)を。

でも、名前を偽ろうと、見た目を偽ろうと、口調を偽っても、いつか限界は来る。
17歳頃、布団を血で濡らしてしまった日。
父は烈火の如く怒り、下腹部を痣になるほど殴られた。その様子を見た母は父と揉み合いになり、父の腹を包丁で割いた。
そのまま叫びながら自分の首を包丁で掻っ切った母の姿を呆然と眺めながら感じた。

(あぁ。異常だ)

その日のうちに私は家を出た。
ありったけの財産と、遠い親戚の住所が書かれたメモだけを持って。
付いた先は大叔母の家だった。一人暮らしの大叔母は私を暖かく迎え入れてくれ、女性の生き方を教えてくれた。生理用品の買い方、使い方。下着の着方。
初めて履いたスカートは違和感があったけど、大叔母が可愛い可愛いと喜んでくれたので悪くなかった。
大叔母は、よく私の髪を梳かしながら昔話をするのが好きだった。

『ばあちゃん、女の子は喧嘩とかしちゃ駄目なの？』

「そんな訳あるか！アタシはね、昔はヤンチャして生きてきたのさ。喧嘩も煙草もやった。良いかい？よくお聞き。男だから、女だから。これをしちゃ駄目って事は無いんだ。自分でそこを区切るんじゃあないよ。好きに生きな。アンタの人生はアンタだけのもんだ。アンタのやることに意義を唱えるやつは物理でも、言語でも、見た目でもいい。ブン殴って黙らせちまいな。」

そう言ってかははと笑い、上機嫌に私を撫でる手からほんのり煙草の匂いがする。そんな大叔母が大好きだった。

『…そんな大叔母が一昨年亡くなってね。数ヶ月くらい萬屋も畳んでぼぅっとしてたんだけど、貴方達を見たら居ても立っても居られなくて。萬屋での人脈も何もかも使って、ボスの所在特定してカチコミに行ったんだ。私にも怪盗をやらせてくれって…まぁ…それで今に至る感じかな？ね？つまらん話でしょ？』

言い終わった瞬間、眼の前が黒くなった。

『…苦しいよトントン。…いや、皆か』

ぎゅむと抱きしめられて重みが身体中に伝わる。