君に愛の衝撃を！【d!】 (ページ39)

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赤色の欲望ページ39

「おーなんやA。随分捗っとるなぁ。」

せっせと銅像や彫刻にイタズラを施していると、後ろから声がかけられた。

『お！トントンだー！見て見てこれ凄くない？』

目の前には私によってホラーチックに魔改造された銅像や彫刻の数々。
目や口から血を流す女神像に、腹の骨とその中身がむき出しになった男性像。美しいはずの天使達も非業の声を上げるように口から血を流し、目は黒く塗りつぶし、ギロリと睨みつけるように加工を施した。
知らない人が見たら部屋のぼんやり暗い雰囲気も相まって相当驚いて泣き叫ぶことだろう。

「…お、おう、イタズラの成果やって分かっててもこれはちょっとビビるわ…。こんなんホラゲーに出てきても遜色ないで…凄すぎるて…」

『ふふーん。凄いでしょー！こっちも力入れたんだよ！来て来て！』

トントンの手を引いて室内を見せて回る。
すると、1つの真っ白な彫刻の前でトントンが興味深そうに立ち止まった。

「あれ？これだけ何もされてへんな。これは何もせんでええの？」

『んー？…あぁ、それか。それはいいんだ。そのままでね。』

それは美しい白い女性の彫刻だった。しかし似つかわしくない勇ましく大きな甲冑に見を包み、手には大剣を振りかざし、必死に何かを叫んでいる。

『これは、私の憧れの姿でもあるからね。憧れを汚すほど酷い人間じゃないよ。』

「…A、お前の事情は。まだ話してくれへんのか。」

『そうだね。今は任務中だし。大した話でも無いしさ。いつかじゃ駄目かな？』

「話の大きい小さいは関係ないやろ。……もうお前を隠さんでくれ…全部全部見せてくれ…そんなに俺等は信用に足らんのか…？」

自ら豚の面を取ったトントンが寂しそうで、今にも泣きそうな目をしていた。思わずその顔に両手を当てて潤んだ目をなぞる。

『違うよ。そういうわけじゃないんだけどね。…じゃあ丁度いい機会だし、話そうか。警察が来たらすぐ終わりにするけど』

その女性の彫刻の台座に腰を掛けてインカムを調節する

『あーあー。んんっ。今からちょっと昔話するね。各自イタズラは続けてて。緊急の連絡あれば話もぶった切っていいから。』

こういう時何もリアクションしてこない辺り、ちょっぴり優しいなと思う。

『…んじゃあ、話そうか。私が怪盗業に手を染めるまでに至った経緯と、私の昔話を。ね。』

すぅ、と息を吸って。頭の中に閉じ込めていた記憶を思い出しながら声に乗せた。