水色の心が揺れる ページ36
決行日当日。
大きめのリュックを背負い、インカムの動作確認を終える。本日も異常なし。話し合って決めていた位置につき、指示を待つ。
ガガッと音がしてショッピくんの声がした。
【準備できてますねー？停電いきまーす、3、2、1、暗転】
暗転した瞬間、シャオロンは鍵を破り、ゾムはダクトから、ロボロは煙幕と共に、トントンとエミさんは警察に紛れて、コネシマと私は息を合わせて窓を蹴破る。
満月がよく見える大きな窓を蹴破れば音に気づいた警察官が多く駆けつける。
『今晩は、とても良い夜ですね。』
にこりと笑い、挨拶をすると悔しそうな顔の警察がいつもの返しをする。
「っ…！我々怪盗団だな！器物損壊で現行犯逮捕する！」
『あらあら怖い。コネシマぁ、あのワンちゃん達吠える声がうるさいけど…どうする？』
「せやなぁ、犬は従順なのがかわええもんなぁ。A目ぇ瞑っとき。」
煽るようにコネシマの肩に顔を寄せてクスクスと笑えば、悪い顔をしたコネシマがこちらに指示をして水晶玉を持ち出す。
怪しげな光を放った水晶玉を見てしまえば、オシマイ。
「…見たな？［俺らの邪魔すんなや。今すぐ家帰って寝ろ］」
低い声が聞こえて、ちらりと見ると目に光を灯さなくなった警官が皆、ふらふらと帰っていく。
『お見事』「ふーん！プロ結果！」
ドヤ顔をしたコネシマの頭をわしゃわしゃと撫でて褒める。
スタッと窓枠から飛び降りて展示室に向かおうとした背を眺める。
「なんやA、降りれないんけ？」
『…お恥ずかしながら』
足をくじいたこともあり、前の空中散歩に比べれば大した高さではないのに少し怖くて足がすくむ。
「しゃあないなぁ。ほら、受け止めたるから飛び降り」
『…ちょっと怖い』
「大丈夫や！俺を信じろ」
きゅっと目を瞑ってて足に力を入れれば身体が中に浮く。
「…よっと。な、大丈夫やったやろ？」
『ありがとう…助かったよ』
ボスっと抱きとめられて硝子細工を扱うかのようにそっと降ろされた。
「…不思議やなぁ」『何が？』
考えるように顎に手を当てながらこちらをじぃっと見つめてくる。
「やっぱお前だけやねんな。こない大切に扱わな思うんは。…今までめちゃめちゃ心無いだの言われてきたけど、Aといるとこのへんがじんわり温かいんや」
ここ、と私の心臓のあたりをすっと指さしながらゆっくり語る彼はいつも以上に真剣な顔をしていた。
「…急かさんけどな、あの日の返事、俺も、他の奴も待っとるで。」
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
