皆で空中散歩！ ページ31
皆はもう既に飛び出していった。少し先で待っていてくれているが、このまま鬱を放っておくこともできない。
『…ごめん！少しだけ目ぇ瞑ってて！』
鬱を抱きかかえ、屋上からひらりと飛ぶ。
ふわりと身体が宙に浮いた。
「う…わ…」
『大丈夫。絶対離さないから。』
強ばる身体を抱き締めて着地し、また足に力を入れた。
『ごめん皆！お待たせ！』
「大先生！大丈夫か？！…そか高所恐怖症…」
コネシマが心配そうに駆け寄ってくる。
『うん。すっかり失念してた…。』
まだ少し震えてはいるが、ぽんぽんと背中を擦ると少し落ち着いた。
『うつー？うつくーん。聞こえる？』
「だい、じょぶ。聞こえとるよ。」
『このまま少し警察撒くために空中散歩するから、怖いならもっかい目ぇ瞑って、私の腕でも肩でも何でもいいからぎゅっとしてて。』
「ん…わかった。」
「行けますか？」『オッケーだよショッピくん。』
皆との空中散歩が始まった。後ろを振り返ればもう歴史館が豆粒のように遠い。サイレンも遠くからしか聞こえなかった。まさか屋上から飛び降りて逃げるなんて夢にも思わないだろう。
「これええなぁ！空にも逃げれるの強いわ！」
『ありがとロボロ！頑張った自信作だからね！』
「最近連絡つかなかったのはこれの開発でしたか。」
『エミさん…そして皆…その説はご迷惑を…。』
「心配したんやからな？つ、次はちゃんとホウレンソウしてや。」
『ごめんってばゾム〜。』
他愛のない会話をしながら夜空中をふわりふわり走り回る。
「…いま、なら。お星さまでも何でも届きそうやな。」
鬱が空を見上げて呟いた。
『…届くまでそう遠くないかもね。』
「そうだとええなぁ…」
きゅうと背中まで伸ばされた手に力が入り、耳元にそっとキスが落とされた。
「ふは、真っ赤や。」
『…余裕出てきたなら手ぇ離してもいい？？』
「冗談ですやん！？おうちまで送ってってほしいなぁ…。」
『…分かった。鬱のおうちどのあたり？』
「大先生、下見れんやろ。俺が案内するわ！」
『ありがとうシャオロン！助かる！』
シャオロンの案内で鬱を家まで送り届ける。
『じゃあまた明日！』
「Aちゃん！…ありがとうな。」
『いいの、高所恐怖症なの失念してた私の責任だから。ごめんね、怖かったのに。』
「…いや、綺麗なもん見れたし役得やったわ。おやすみ。」
『うん。おやすみ。』
ふわりとまた夜空へ飛び上がり、シャオロンとも別れ家へと戻った。
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
