君に愛の衝撃を！【d!】 (ページ30)

今日:15 hit、昨日:3 hit、合計:4,759 hit

青色の夜空ページ30

鬱に手を引かれ、歴史館の屋上まで案内される。ガチャリと扉が開けられて少し冷たい夜の匂いがする。

「見て見て。めっちゃ綺麗やろ？」

そこには一面の夜空と大きな丸い月、少し下をみれば町の夜景が広がっていた。

『ほんとだ…綺麗…』

「一服したくて屋上まで来たらめっちゃ綺麗でな、Aちゃんと見たくなってん。」

にへ。と笑う彼はいつものような余裕のある表情では無く、少年のような顔をしていた。

「タバコ吸ってもええ？」『いいよー』

鬱の吐いた煙が夜空へ吸い込まれていく。
散りばめられた無数の星にそっと手を伸ばす。冷たい気温が肌に触れた。

「…届きそう？」『…無理そう』

隣で鬱も手を伸ばす。

「うーん、届かんなぁ。…届かん方がええんかな。俺が触れたら壊してしまいそうやわ。」

深海のような青い目は、悲しそうにこちらを見つめていた。

『…大丈夫、壊れないよ。ほら』

鬱の手を取って自分の頬に当てる。

『そこまで鈍感じゃないからね。…可愛げない？』

「…いや、それでこそ僕らが惚れたAちゃんやわ。」

頬をすり、と撫でられた。自分より少し低い体温が手袋越しに伝わる。

【おい！A！大先生！屋上おるな？】

突然耳元でシャオロンの声がする。通信機からの連絡のようだ。

『いるよ？どうしたの？』

【イタズラ終わったし、警察の応援来たから逃げるで！そのままそこで待っといて！全員屋上集合や！】

その連絡の通り、１分程待っていると全員が揃う。

「…んでA。ここからどうやって逃げるん？」

トントンがこちらに問う。その言葉に懐から新開発したポーションを取り出した。

『跳躍ポーション！とりあえずこれ飲んで！』

全員分を配り、せーので飲み干す。

『…やっぱまっず』
「…干物の味すんねんけど」

んべぇとゾムが顔をしかめる。他のメンバーも殆が渋い顔をしていた。

「そんなにですか？」

1人しれっとした顔をしているエミさんにはシャオロンが信じられないという顔をしていた。

『まぁ…皆ジャンプしてみて？』

「…んぉ！凄い飛べるやん！楽しいなこれ！」

コネシマが笑いながらぴょいぴょいと屋上を飛び回る。

『さ！逃げるよ皆！』

そういうと皆が夜へと飛び出していったが、1人だけ動こうとしない。

『鬱？』

「…ごめんAちゃん。実は高所恐怖症やねん。あし…すくんでもうて…」

鬱が少し震えながらフェンスに掴まっていた。近くからサイレンと階段を登る音がする。マズい。