桃色と黄緑色の執着 ページ28
狭いダクトの中をゾムの案内で潜り抜け、歴史館内に潜入することができた。
「出る前に俺が先に行く。俺がオッケーって言うまで出るなよ？ええな？」
ゾムはそう言って颯爽と頭上にあるダクトの出口から出ていってしまった。
ダクトの出口付近は中々狭く、ロボロと抱きしめ合うようにして向かい合っていてもぎゅうぎゅうだ。
『ん〜…せま…ロボロ大丈夫？』
「だ、大丈夫やで！だからあんま動かんで…」
コソコソと話をしていると誰かの足音が近づいてくる。しかも複数人だ。
『…っ！』「！？」
思わずロボロを庇うようにして抱き締める力を強くする。
頭上の足音はカツカツと音を鳴らして遠ざかっていった。
『……行った…かな？ごめんねロボロ。痛くなかった？』
「……あんさん…いくら俺がちぃこいからって油断しすぎちゃう？…胸、当たっとるんよ……」
薄暗いダクトの中でもわかるくらいに顔を真っ赤にしたロボロが少し不機嫌そうにこちらを睨んだ。
『ご…ごめ…』
謝罪の言葉を伝えようとしたが唇の端に柔らかい感触がして思わず黙り込む。
「…俺だってAの事好きなんよ。このくらいするで？」
『……ろ…ロボロ…顔近い…。』
「甘く見られたら困るで。正々堂々とは言え、二人きりになれる機会を逃すほど馬鹿やないし。な？」
一瞬見えた唇には、私の赤いリップが移っていて。歪められた唇がとても扇情的に見えた。
「おっけ！出てええよ。」
頭上からゾムの声がしてバッと離れた。開けられたダクトから出て大きく空気を吸う。
「何や、2人とも顔真っ赤やん。まぁダクト狭いもんな。気分悪ないか？」
『うん！大丈夫！』
「せ、せや！お前こそ大丈夫やったか？」
「おん！ちょい見つかったけど振り切ってきたわ！」
ゾムが私の手を引いて早く行こうと促す。ロボロの静止も振り切られ手を引かれるまま鎧兜が飾られた展示室へと向かった。
「ふーん！やっぱカッコええなぁ！」
ゾムは上機嫌で鎧兜を被っていた。今回の展示には姫の装いもあり、きらびやかな簪や美しい着物も展示されていた。
『おぉ…！』
「やっぱAもキラキラしたの好きなん？」
『んーまぁ…綺麗だなとは思うよ。』
「ほーん…そんなら…これやな！」
ゾムが黄緑色の着物をぱさりとかけて大きな翡翠のはまった簪を私の髪にさす。
「俺だけのお姫さんの出来上がりや！」
左手の薬指を優しく撫でて、指にちぅと口吻られる。
「ロボロにだけ抜け駆けはさせへんよ？」
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
