君に愛の衝撃を！【d!】 (ページ22)

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その言葉にお兄さんが、ぴくり。と反応する。
マスクの下の顔が伺えない。

『…オスマンさんから聞いたことがあります。黒髪で、眼鏡で、マスクをつけた、ちょっと外道なお兄さんが内通者にいる。と。』

「アイツ…何話してんだよ……」

はぁ、と眉間を抑えて少し恥ずかしそうに項垂れたこの人はお兄さん…もとい、ひとらんらんさんで間違いなさそうだ。

「あー…えっと…改めまして、ひとらんらんです。マンちゃんとは旧知の仲だからね、君の話も聞いたことがあるよ。」

にこ。と柔らかい顔で笑ったひとらんらんさん。
悪い人ではなさそうだ。

「ひとらんらんって名前長いでしょ？ひとらんで良いよ。」

『わかりました。ひとらんさんで。』

「うん、よろしくね。Aちゃん。』

その後、持ってきてくれた荷物の中身は次のイタズラ先である佐山県立歴史館の見取り図や、警備配置、監視カメラの場所など有益な情報ばかりだった。

『わ…警備配置まで入ってる…エミさんすっご…仕事早すぎる…。』

「ね。俺もグルッペンにこれ持ってけって言われたときにびっくりした。」

『……ひとらんさんはグルッペンさんに会ったことがあるんですか？』

「あぁうん。司令受けるときとかね。Aちゃんとはタイミングが中々合わなくて会えないってしょぼくれてた。そのうち絶対に会いに行く！！って息巻いてたよ。」

『わぁすっごい嫌な予感がします。』

「うん、間違いないね。俺もそう思うもん。」

くすくすと笑う横顔も絵になる。

「そういえば、Aちゃんはポーション使って怪盗業やってるんだっけ？」

『はい、最近はこっちにバフがかかるようなポーションを作りたいんですけど…中々うまく行かなくて…』

「そっか。ならこの人達が役に立つかも。連絡先書いておくね。彼らも内通者だから、君のことは知ってると思うよ。」

そう言って近くのメモに2名の名前と連絡先が書かれていく。

『…兄さん、しんぺい神…』

「そ。兄さんは独自のルートで欲しい材料集めてくれるし、ぺ神は…まぁ治験で怪我したとかそういう時かな。薬の知識もあるし相談に乗ってくれると思うよ。」

『色々ありがとうございます…！』

「いや、こちらこそお茶ありがとう。あ、俺…マンちゃんの教会近くで農場やってるからさ、良かったら…今度来てほしいな。」

帰りがけ、彼はそう言って照れくさそうにマスクで顔を隠した。

『はい！必ず。』

そう答えると爽やかにそれじゃ。言ってと帰ってしまった。