白の来訪者 ページ21
(A side)
次のイタズラも遂行させるために、新しくポーションを作らなくてはならない。
前のやつは中々いい出来だったがもっとユーモアを求めてもいいかもしれない。クシャミが止まらなくなるとか、身体がめちゃめちゃ痒くなるとか。…難しいな。
ふむ。どうしたものか。と考えながら自室の本棚の前に立つ。飾られている金時計の時間を4時1分に合わせ、本棚の中から14冊の本を順番通りに押し込む。
黒、深緑、赤、水色、白、青、黄色、藤色、桃、黄緑、コバルトブルー、茶色、紫、オレンジ。
最後の一冊を押し込むと、カチ。と音がする。力を入れて本棚を押すと地下への階段が出てくる。電気をつけて、地下へ向かうと毒々しい色のフラスコや、実験器具の揃ったラボへと繋がる。
『…おし、実験開始しますか！』
白衣を羽織り、ポーションの制作に取り掛かる。とりあえず睡眠ポーションと、こっちに何かしら利があるポーションを作ってみてもいいかもしれない。
こぽこぽと音を立てる紫色の液体に粉末を少量混ぜる。できた液体を蒸留し、精製したものを瓶にいれて封をすれば睡眠ポーションの出来上がりだ。前々からのと同じレシピで作っているし、効果は折り紙付き。なぜなら一度自分で実験した時に起きたら2日経ってたことがある。
よく徹夜で無理をするトントンやエミさんを寝かすのにも使えそうだ。今度目の下にクマをつくってたら、これを口にねじ込んでやろう。そうしよう。
そんな決意を固めていると、チャイムが鳴った。モニターを確認すると宅配のようだ。…私、何かネットで頼んだっけ？
とりあえず返答する。
『はーい』
「サヤマ運輸です。萬屋さんでお間違いないでしょうか？」
荷物を持った爽やか好青年のお兄さん。黒髪でメガネがよく似合う。
『えぇ。玄関先に置いてて貰う事ってできますか？』
「申し訳ございません。こちらワレモノですので、引き取って頂きたいのですが…」
そう言ってお兄さんは帽子を深く被る。その帽子には内通者を意味するピンバッジがついていた。
成程そう来たか。
『…わかりました。今行きますね。』
急いで白衣を脱ぎ捨て、地下室への扉を閉じる。服を整えて玄関の扉を開けた。
『お待たせしました。…お仕事お疲れ様です。お茶でもいかがですか？』
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて…」
お兄さんを居間に通し、お茶とお菓子を用意する。
『…初めまして…ですよね。
ひとらんらんさん。』
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
